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石川弘樹はトレイルランニング界のパイオニアだ。15年以上も前から山を駆けるというアクティビティの魅力と可能性を広めてくれた。彼がいなかったら、日本におけるトレイルランニングは「山岳マラソン」「耐久競走」といったスタイルのままだったかもしれない。しかし石川弘樹のトレイルランニングにはレースだけじゃない。例えば壮大な稜線を駆け抜ける爽快感があり、フカフカのシングルトラックを踏みしめる喜びがあり、面白く、スタイルがある。その側にいたのは、いつもモントレイルであり、2017年にブランドネームが変わったコロンビア モントレイルだった。

(映像 松田正臣 / 写真 古谷勝 / 文 礒村真介 / 協力 Columbia Montrail

こんなエピソードがある。石川弘樹はその昔、当時当たりまえだったタンクトップにランパンとは異なる姿、スタイリッシュな現在のトレイルランニング的な着こなしで、ハセツネ(日本山岳耐久レース)に現れた。北米のトレイルランニング文化に触れ、「山を駆けることはもっと自由で、もっとカッコいい」アクティビティであってもいいことを、伝えたかったからだ。しかし、ともすれば外見だけをみて「チャラい」と誤解されかねない。そのためにもパフォーマンス、つまり結果が必要だった。

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ライバルの足元はおしなべてマラソンシューズだった。その多くは白色が基調で、泥汚れが悪目立ちしてよそよそしく、軽量ではあったがトレイルでの安定性に欠けた。山を走ることに我慢を強いるシューズだった。しかし石川のトレイルランニングには「我慢」がなかった。足元にはまだほとんどの人が目にしたことのなかったトレイルを走るための専用シューズがあった。このシューズなら自分らしくトレイルランを遊べる。そして、石川弘樹は2002年と2003年のハセツネを連覇した。コロンビア モントレイルのシューズを履いて……。

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コロンビア モントレイルとともにトレイルランニングというスポーツ、そしてカルチャーを伝えて続けてきた石川弘樹。そして、その黎明期を知り、自身もトレイルランニングを愛するコロンビアスポーツウェアジャパンの新木知範。二人が改めて、なぜコロンビア モントレイルのシューズがスタンダードであり、今なおトレラン界を引っ張るシューズであるのか。その歴史を紐解きながら語りあった。

石川弘樹とコロンビア モントレイル、必然だったその出会い

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石川弘樹(以下、石川):僕はもともとアドベンチャーレースがやりたくてこの世界に入りました。そして2001年ごろから、自分が得意にしていて、とくに心惹かれたトレイルランニングを中心に活動したいと思い、いろいろとリサーチしていたんです。トレイルランニングにおいて、言うまでもなくシューズは最も大事なギアのひとつ。そのためいろいろな靴を履いてみましたが、その中で一番しっくりきたのがモントレイルだったんです。

新木知範(以下、新木):モントレイルはその前の年くらいからよく、日本での取り扱いがスタートしたばかりで、僕らもまだトレイルランニングのことがよく分かってはおらず、履いている人は皆無に近かったです。「トレイルランニング」という言葉自体がほぼ使われていなかったので、カテゴリーというかマーケットが存在しないのも当たり前ですよね。そんなとき、同僚から「石川弘樹というすごい選手がいるんだけど」と聞き、ぜひサポートしてみたいと思い会わせてもらったんです。

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石川:当時のトレイルランニングシーンは北米を中心にムーブメントが起こっていました。アメリカの選手がヨーロッパの大会に遠征して勝ったりしていたんですが、そのアメリカのトレイルランナーはみんなモントレイルを履いていました。それがまた、すごくカッコよく履きこなしてるんですよ。パフォーマンスとキャラクターの両方が兼ね備わっていた。そこにも引き込まれました。

新木:当時のことと言えば、やはりハセツネが思い出深いです。モントレイルのディストリビュートを始めたので、このスポーツに対して理解を深めようと、2000年にはじめてハセツネを走りました。僕を含めた関係者6人くらいでチームを組んだのですが、当時すでに1000人くらいいた参加者のうち、モントレイルのシューズはその関係者だけで、他は誰1人としてモントレイルを履いてなくて。そんな状況だったので、石川さんが2002年に優勝して、2003年でまた連勝して、それでモントレイルの名前がすごい一気に広がった感じがします。石川弘樹とモントレイルは、あのときをきっかけに一緒に大きくならせてもらった気がします。今はこの業界では石川弘樹の名前を知らない人はいないと思うんですよ。でも当時は「石川弘樹って誰だ?」っていうところからでしたから。

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新木:もともとワンスポーツというブランドがあって、1997年にモントレイルという名前に生まれ変わりました。このときからマウンテニアリングやクライミングなどのパフォーマンスシューズを作り始めたのですが、その中心に「トレイルランニング」を据えたんです。当時は業界としても、シューズメーカーとしても、トレイルランニングにフォーカスしたメーカーは他になかったはず。その意味ではモントレイルが間違いなく「オリジナル・トレイルランニング・ブランド」だと思います。今は親会社の名前を冠したコロンビア モントレイルというブランド名に変わりましたが、その姿勢は変わらず、トレイルランニングに特化したシューズ作りを行っています。

石川:トレイルランニング用のシューズを作っているブランドだという情報は、当時、僕の中にぽーんと入ってきましたね。マラソンシューズのオフロード版のようなものではなく、トレイルランニングシューズを生み出し、そこからスタートしたブランドというのが好印象で、信頼感がありました。実際に足入れしたときのフィーリングが違って、安定感があるんですよ。その信頼は今も変わりません。

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新木:石川さんが評価してくださった安定感というのは、たぶん、モントレイルが足にフィットしているからの安定感ではないでしょうか。フィットは個人差が生じるものではありますが、もともとモントレイルが一番力を入れていた部分がフィッティングなんです。「インテグラフィット」と言って、80万~100万人の足型をデジタルスキャンして理想的なフィッティングを生み出した。だから、モントレイルといえばトレイルランニングだけど、その中でもフィット感にこだわったブランドであると。そのフィット感が石川さんにハマってくれたのだと思います。

石川:僕の走り方の特徴として、とにかく下りを飛ばすんですね。なので、ソールが薄かったりシューズ自体が軽かったりするとストレスを感じるんです。過度に柔らかかったり薄かったりする靴は着地の衝撃が大きいですし、砂利やら小石やら木の根やら、あるいは路面の凸凹やらを細かく避けながら走らなくてはなりません。でも、モントレイルのミッドソールの硬さだったりとか厚さだったりとかがちょうど良かったんですよね。

石川弘樹の勝負シューズ

石川:一番最初の勝負シューズは<レオナディバイド>というモデルです。話が少しそれますが、僕はシューズを履き比べるときに、右足と左足で違うシューズを履いてみます。例えば右足にはAというブランドのあるモデルを、左足にはモントレイルのシューズを履くと、立ち上がった時点ですぐに安定感の違いが感じられるんです。いざトレイルを走るとなればなおさら。そうして選んだのが<レオナディバイド>でした。ハセツネを連覇したときもこのモデル。今日は実際に履いていた靴をお持ちしました。当時は勝負レースで履くシューズには砂利や小石が入り込まないよう靴下をゲイター状に縫い付け、紐にはいちいちほどけないようちょっとしたパーツを付けていました。少しストイックでしたね(笑)。

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新木:<レオナディバイド>はだいぶしっかりしたモデルですね。2000年代の前半くらいまでのシューズには、非常に硬いナイロンプレートをミッドソールに忍ばせていたんですよ。なので、がっちりではあるけれども、ちょっと重かったとかっていう感じの仕上がりでした。現在はプレートを使わず、ミッドソールの素材、EVAと言うのですが、その硬度を部分的に変えることでプロテクション機能を備えるような作りに進化しています。同じEVAで硬度を硬くしているので、剥がれることがありません。加えて軽くできるのがポイントで、そこから軽量化が進みました。

石川:今の勝負シューズは<バハダ><カルドラド>といったモデルです。やはり走っているときの安定感が抜群にいい。長時間走ってもストレスが無いんです。つまり疲れにくい。それが僕にとっては一つの武器かなと思ってますね。トレイルランニングはスプリントスポーツ、つまり陸上の短距離だったり、数kmのレースではありません。走りだしは元気だけれど、距離を踏めば走り方、体の動かし方が変わってきます。その中でどううまく走るのというのがトレイルランニングの難しいところで、面白いところでもあると思うんです。だから必要以上に軽すぎたりだとか、柔らかすぎたりすると、もしかしたら最初はいいかもしれませんが、疲れてくるとちょっとした凹凸でも痛いと感じてしまう。するといちいち神経質にかわさなきゃいけない。しっかりとした厚みがあれば、ストレスなく最後まで走れるんです。

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新木:石川さんは昔から一貫してますよね。ロードランナーは数グラム単位の違いにもこだわりますが、トレイルランはいろいろな路面があって、アップダウンの変化があって、着地のポイントもその都度変わります。なので走っているときに感じる軽さというのはグラムだけでは測れないことがあるんです。実際にオントレイルで軽く感じさせるというか、そのバランスの取れたシューズがいいシューズなのではないでしょうか。

石川:<バハダ>というモデルは1、2、3とバージョンを重ねていて、今の3になってからは大きく変わりました。今までのバハダに比べるとより軽いんですよ。それが新木さんの話の通り、グラム自体が軽くなっているわけではなく、履いたときに軽さを出してくれる構造になっています。ミッドソールやアウトソールのパターンは変わらず、僕が求める下りで十分スピードを出せる厚さ・硬さを残しつつも、履いたときに軽さを感じられるんです。

シューズ選びで注意すべきこと

新木:最初からその人にとってベストのシューズを見つけるのは難しいと思います。比較するのが重要なので、まずはフィーリングを優先して一足を選び、使ってみるのがいいでしょう。実際にトレイルで履けば気づくことがあると思いますし、そのうえでショップスタッフや仲間、インターネットなどから情報を得て、より好みのモデルへと近づいていけばいいのだと思います。どういうコースやレスを走るのかでも違ってきますしね。アドバイスがあるとすれば、ショップで試し履きするときにはまずヒモを全体的に緩めて、足入れした後につま先側から改めて締めてあげること。履き口の2、3穴分を緩めるだけに比べると面倒くさいですけど、その方が馴染むので、長時間履いたときの状態に近いところまでは持っていけます。

石川:どのシューズブランドでも当てはまるんですけど、まずはその人にとってのオールラウンドの一足を選んでもらうのがいいでしょう。そのモデルを基準に、距離の短くてフラットなシチュエーションならこのモデルを、よりテクニカルでハードなシチュエーションだったらこのモデルを、と揃えます。だからまず自分の中でのオールラウンドなシューズを見つけて欲しいですね。僕の場合は<バハダⅢ>とか<カルドラドⅡ>です。

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新木:今のコロンビア モントレイルのラインナップには3つのカテゴリーがあります。まずはトレイルランニングというカテゴリーで、比較的スムースなトレイルを想定しています。それに対してマウンテンランニングというカテゴリーは、よりラフな路面で標高が高い山、岩稜地帯なども想定に入れています。作りの面ではプロテクションを高めたりだとか、アッパーの耐久性を増したりだとかしています。反対に軽さ・スピードを重視したのがF.K.T.というカテゴリーです。シチュエーションに応じた使い分けはぜひしてもらいたいと思います。だからといって、マウンテンランニングで、早く走れないとか、逆のことができないかとかではないので、その辺は履き手にうまく料理してもらえるとうれしいですね。

石川:そうですね。標高の低い里山や、距離も短いときはFKTカテゴリーの軽量モデルで行ってみようとか、ファストパッキング的な、荷物を背負って山岳地帯に行くならマウンテンランニングカテゴリーの<トランスアルプス2>で行ってみよう、とか。コロンビアモントレイルのトレイルランニングシューズはいろんなカテゴリーがあって、その中でも細かく分かれているので、パッと見のいきなりでは迷ってしまうかもしれません。でも、逆にそれだけ用意されているのはユーザーにとって便利でもあると思いますよ。

石川弘樹がおすすめするコロンビア モントレイルのトレイルランニングシューズ

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左:カルドラドⅡ
価格/¥14,500+税
サイズ/MENS 25-29、30cm  WOMENS 22.5-26cm
カラー/MENS 3色 WOMENS 3色

右:バハダⅢ
価格/¥14,000+税
サイズ/MENS 25-29、30cm  WOMENS 22.5-26cm
カラー/MENS 4色 WOMENS 4色

詳しくはコロンビア モントレイルの公式サイトをご確認ください。
Columbia Montrail

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石川弘樹(いしかわ ひろき)
2001年よりアドベンチャーレーサーからプロトレイルランナーとして活動を開始。日本古来のストイックな山岳レースの世界に独自のスタイルと雰囲気でフィールドを駆け巡り、欧米スタイルを取り入れたアウトドアスポーツとして「山を走るスポーツ・競技」をトレイルランニングとして日本に普及させる。アスリートとしてだけでなく、日本でのトレイルランニング第一人者としてイベントやレースを日本全国でプロデュース。斑尾高原トレイルランニングレースや、信越五岳トレイルランニングレースなど人気の大会を創り出し、国内でのトレイルランニングの健全な普及に力を注ぐ。

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新木知範(あらき とものり)
1997年にモントレイルのディストリビューターであったハワードに入社。その後、2007年にモントレイルを扱い始めたコロンビアに移籍。20年間、モントレイルに関わり続け、現在はコロンビア モントレイルのMD(マーチャンダイザー)を担当。トレイルランニング歴も19年と長く、数々のレースに参戦。ハセツネCUPは2000年の第8回大会から出場し続け、16回完走。2016年にUTMBのCCCカテゴリーに初出場し完走したことに加え、2017年にはTDSカテゴリーに参戦し、見事完走。