ノルウェーの首都オスロ発のカフェ&バー『フグレン』が、東京に上陸したのは2012年のこと。以来、果実味のあるライトローストコーヒーの文化を牽引してきた。現在では『フグレン・コーヒーロースターズ』も立ち上げて、豆の焙煎から流通までも手がけている。この『フグレン・コーヒーロースターズ』で働く矢崎智也さんは、忙しい合間を縫って山を駆けるトレイルランナーでもある。実はそのトレイルランニングこそが、一般的な会社員であった矢崎さんが、コーヒーを扱う仕事をはじめたきっかになったという。

(写真 古谷勝 / 文 onyourmark)

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「こどもの頃から走るのは大好きで、持久走などは得意分野でした。でも中学から高校まではどちらかというと集中力や瞬発力を必要とするソフトテニス部に所属していました。ソフトテニスというのは基本的にはダブルスなんですが、自分は集中力が必要だけど運動量は少ない前衛だったんです。だから試合が終わった後もなんか体力を持て余しちゃって(笑)。なんとなく自分の特性とは合ってないかなと思ってました」

スポーツ好きな矢崎さんだが、高校を卒業するとご多分に漏れず本格的に身体を動かす機会は減り、時々スノーボードやフットサルを楽しむ程度に。けれど、就職を機会に上京し、東京マラソンに当選したのが転機となった。

「自分独りで練習していて、ランニング仲間というのもいないし、それほど知識もなかったので基本的にはジョギングしながら徐々に距離を伸ばしてという練習だけで。ポイント練習などもやらなかったですね」

そうした最低限の練習方法ながら、持ち前の心肺能力を発揮して初マラソンを3時間40分台で完走。体力に自信をつけたところで目が向いたのがトレイルランニングだった。

「東京マラソンを走った年に、第一回のUTMF(ウルトラトレイル・マウント・フジ)が開催されたんですが、オンラインでライブストリーミングをしていたんです。朝早起きして誰がゴールするのかなって見ていて、ジュリアン・ショリエが、そしてアダム・キャンベルが入ってきて、そして3番目に山本健一さんがゴールしたんです。その頃は誰が誰だかわからなかったんですけどヤマケンさんが苦しそうにするでもなく、観客と笑顔を交わしてゴールするシーンを見て、トレイルランニング始めたい!と思ったんですね」

自分もこのゴールシーンを味わいたいと、すぐさま第二回上州武尊50Kにエントリー。

「理性とか関係なく走れる、出し切れるのが楽しいなと思いましたね。最初の大会からどれだけ出しきれるか、負けないぞって思いながら走ってました。結果ボロボロでしたけど、翌年リベンジのために同じレースを走りました」

翌年の上州武尊ではトレラン2年目にも関わらずなんと20位以内でゴール。その負けないメンタルと東京マラソンでも証明したエンデュランス能力がトレランに向いていることを確認した。ここまではあくまでもストイックなランナーの側面が際立っていた矢崎さんだが、ある出会いがトレイルランニングの楽しみを別の次元へと導いてくれた。

「それまでずっと独りで練習して、レースに出て、みんななんか楽しそうにやってるけど、オレはそんなんじゃないぞって感じだったんです。そんな中、レースで時々顔を合わせる方からイベントに誘って頂いて、そこで出会ったメンバーからSTS(スーパートレイルセッション)というコミュニテイが生まれました。東京だけでなく栃木や山梨やいろんな地域に仲間ができて、その土地を走るという機会が増えていったんです」

こうして日本各地の山をローカルに案内してもらうことが今の仕事に繋がるきっかけとなった。

「元々コーヒーが好きだったんですが、STSを通じて各地の山を走るうちに地方の自然は素晴らしいけど、美味しいコーヒーがなかなかないことに気づいたんです。自然を楽しみながら美味しいコーヒーも味わえたら最高なのにって思って。良い豆を使ってもらえたら、コーヒーも良くなるし、ローカルで遊ぶ楽しみも広がっていくのかなって。それでフグレンでセールスと焙煎をやりたいって話して働き始めたんです」

転職して近頃はレースを控えていたという矢崎さんだが、先日の信越五岳ではペーサーとして久しぶりに大会の雰囲気を味わった。

「最後のレースが一昨年の信越なんですけど、仕事も変わって子どもも生まれて、しばらくはそちらに集中しようということで。けれど、今回の信越100マイルでペーサーをすることになって、走る理由がまたできたなと感じました。台風の影響で100マイルから102kmに短縮となりましたが、僕らは17位でゴールすることができました。2年前に選手として出た時は、ペーサーをSTSの仲間に頼んだんです。今回はSTSの仲間のペーサーとして走って、良い結果もついたのでバトンを渡せた気持ちです。ハードなレースなので言葉数は少なくても、走っている時間を通じて想い出を共有できたことが一番嬉しかったですね」

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【名前】矢崎智也 TOMOYA YAZAKI
【生年月日】1984年12月24日
【職業or所属】会社員
【やっているスポーツ】トレイルランニング
【Instagram】@tomoyayazaki

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HOUDINIのランニングウェア
「カタチがきれいで、着心地が良いので気に入っています。フグレンと同じ北欧発のブランドというところも良いですね」