fbpx

先日のmark GEARでも紹介したポートランド発のナチュラルエナジーフード『Trail Butter(トレイル・バター)』。そのファウンダーのひとりジェフ・ボジスがこの春、来日した。アウトドア見本市『Off The Grid』のTrail Butterブースにも自ら立っていたので、彼と言葉を交わした方も多いのではないだろうか。この機会に鎌倉のコミュニティがジェフを招いて地元のトレイルを案内するという。ファウンダー本人からTrail Butterのストーリーを聞くべく、いざ鎌倉へ!

(写真 / 文 松田正臣)

What’s Trail Butter?
耳の早いトレイルランナーやハイカーの間で、話題になりつつあるTrail Butterとは、そもそもどんなものなのか。まずは、ジェフにその特徴を聞いてみた。

「Trail Butterの特徴は第一にカロリー密度が高いことなんだ。質の良い植物性の脂質やプロテインが豊富に含まれているので、重量あたりのカロリーが非常に高い。自然素材を非加熱で処理した“リアルフード”であることにこだわっているよ。そして何よりも伝えたいのが“美味しい”ということ。今回も日本の多くの人に試食してもらったけど、みんなとても美味しいと言ってくれたね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

北米のオーガニックマーケットやスポーツショップに行ったことのある方ならご存知だろうが、当地でのエナジーフードのバリエーションはとても豊富だ。まだまだ選択肢の少ない日本のエナジーフード事情を考えると、こうした新しいプロダクトは大歓迎だ。

ローカルと鎌倉のトレイルを堪能
満開の桜で賑わう鎌倉。参道の賑わいや鶴ケ丘八幡宮の雰囲気を味わったら、ローカルと合流して八幡宮裏手のトレイルへ。前日までの雨でぬかるんで少々ワイルドな印象の路面だが、日本では見慣れないパールイズミ製のトレイルシューズで軽快にランを楽しむ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

サンフランシスコに生まれ、アウトドア好きの両親のもとで育ったジェフは、留学先のドイツでトレイルランニングに出会ったという。ポートランドに居を移してからは、地元のトレイルランコミュニティーに溶け込み、Trail Butter販売の初期にはそうした仲間のトレイルランナーの間から広まって行った。

そもそもTrail Butterが生まれたきっかけもアウトドアとスポーツに親しんできた彼らしいエピソードとなっている。2011年、働いていたドイツからポートランドまで彼と当時のガールフレンドは10ヶ月に及ぶ自転車での旅に出た。ヨーロッパを南下し、アフリカ大陸を経て船で大西洋を渡る。フロリダまで来たところで、残念なことに彼女とは別れることになった。ただでさえ厳しかったパッキングがひとりになることでさらにタイトに。そこで彼は、ナッツやはちみつ、ベリーなど持っていた食料をひとつのコンテナに一緒にすることで荷物を減らすことにした。これが思ってもいない結果を生み出した。ミックスした食料はとても美味しくて、エネルギーに富み、彼の残りの旅程を支えてくれた。「こんな美味しいものなんだから、多くの人とシェアしたい!」と始めたのがTrail Butterなのだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

散り始めた桜の木の下をくぐり、建長寺の裏山にある半僧坊では、天狗の説明を受ける。ジェフにとっては、とてもエキゾチックなトレイル体験だったろう。ポートランドと日本のトレイルコミュニティーの違いはあるかと聞いてみると「違いは全く感じられないね。みんなで会話を交わしながら走って、汗を流してビールを飲む。トレイルランナーのコミュニティの雰囲気は共通だよ」と話してくれた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

脂質を中心としたエナジーフードというオリジナリティ
実は、多様な北米のエナジーフードの中でもTrail Butterは独特な存在だ。従来のエナジーバーやジェルは糖質を主成分とした、ガツン!と効く速効性の高いものが中心だった。一方、Trail Butterの主成分は脂質。糖質のように一気に吸収されて効果を発揮するものではなく、ゆっくり消化され時間をかけながらエネルギーになるのだ。

「僕がドイツからアメリカに帰ってきた時は、確かにエナジーフードのバリエーションは多くなっていたけれど高糖質で人工的な素材のものが中心だった。それに対して自然由来のリアルフードをアクティビティの最中にも食べたいと思って作ったのがTrail Butter。結果的にそれは脂質とタンパク質を中心としたものとなった。開発した当時はパレオダイエットや低糖質食がブームになる前だったから狙ったわけではないけれど、高強度でない運動に時間をかけて効くという独自なエナジーフードになったんだ」とジェフ。

脂質中心になったことで、カロリー密度が高いというメリットも生まれた。糖質が1g=4kcalなのに対して、脂質は1g=9kcalとグラムあたりの熱量は脂質が有利だ。Trail Butterも128gに対して760kcalと重量の割に非常に高い熱量を含んでいる。
トレイルランナーの間で火が着いたTrail Butterだが、長時間身体を動かし、荷物の重量を気にするロングハイカーやクライマーなどにこそメリットのあるエナジーフードと言えるだろう。

日本の輸入代理店である株式会社ラフリンクの桑原慶さん(Runboys! Rungirls!でお馴染みの桑原さんだ)も、Trail Butterの特徴をしっかり理解して上手に使って欲しいと語る。

「一般的なバーやジェルのように、ブーストするエナジーフードを想像されると期待はずれになってしまうと思います。でも、ゆっくり長く効くからハイキングやバイクパッキング、クライミングなどではとても重宝すると思う。トレランにしても、レースのような高強度のばかりでなくて、逆にTrail Butterを使ってゆっくり長く楽しむトレイルランというものも提案していきたいと思いますね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

6/1より全国のコアショップでの取り扱いを開始し、6/21にはオンラインストアでの正式販売を開始したTrail Butter。多様化する日本のアウトドアアクティビティを補給の面から支えてくれる面白いプロダクトになりそうだ。