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日本においてトレイルランニングという競技が産声をあげて、はや20年以上が過ぎようしている。その間、多くのアスリートがこの競技にのめりこみ、とりわけ100マイルレースという一見すると途方もない距離を、しかも山で走りきることに、多くの人が魅了されてきた。その魅力にとりつかれ、カルチャーとしてのトレイルランニングを体感し、自身のスタイルとして体現してきたのが、トレラン界のパイオニアの一人である石川弘樹さんだ。

彼の功績は言わずもがなだが、説明しておくと、トレラン黎明期から第一線の世界で戦い、現在は国内で「斑尾高原トレイルランニングレース」や「奥三河パワートレイル」など、数々の人気レースをプロデュース。その彼がプロデュースする中で一際ファンに愛され、「一度は出てみたい」と言われるレースが2009年からスタートした「信越五岳トレイルランニングレース~パタゴニアCUP~」(以下、信越五岳)だ。既にonyourmarkでも既報の通り、2017年からは待望の100マイルコースが新設され、トレラン関係者やファンから大きな注目を浴びている。

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レース開始を3ヶ月後に控えた6月、コース整備や地方自治体との折衝で東奔西走する石川さんへのインタビューが実現。5月末に発表された情報でしか知りえなかった“100マイルの信越五岳”とは、どのようにして、どのように生まれたのか。レース構想から約10年。石川さんの夢とも言える、100マイルレース開催への思いを聞いた。

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——2009年に初開催してから8年の月日が流れましたが、最初はどのような思いからスタートしたのですか?

「この信越五岳が持つ自然の中に、100kmを超えるトレイルをつなげることができるんじゃないかと思ったのは2007年にスタートし、僕自身がプロデュースした『斑尾高原トレイルランニングレース』です。ブナの森の爽やかさや、フカフカとした足裏の感触、そして稜線から望む絶景。アメリカで感じたような、トレイルランニングの真の醍醐味を存分に詰め込んだレースが実現できたことと、この場所が100km以上を超えるコースとしてつながるということを、現地の方に聞いたのがきっかけでした」

——コースを設定する前、最初の“信越五岳”につながるルートを石川さんが走ったときに、どのように感じましたか?

「初めてこのコースを走ったときに『いいね!』という感じが心から沸き立ってきました。そこからは斑尾観光協会の方と一緒に、実現するべくすぐに妙高市長のもとへ。プレゼンテーションをしたところ、当時の市長も「やりましょう!」と賛成してくれて。とはいえ、今でこそ欧米のレースに参加する人も増えていますが、まだまだ日本では100マイルレースの認知度は低かった。ということで、まずは100kmレースからスタートすることになったんです」

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2009年に開催された第1回の信越五岳のスタート風景。全てはここから始まった

——第1回目のレースを終えてどのような気持ちになったのでしょうか

「第1回目は不安なことも正直ありました。そもそも2009年当時、100kmを超える、しかも山を走るレースといえば『OSJおんたけウルトラトレイル』くらいしかなかった気がします。しかもおんたけはトレイルというよりも林道が主体。そんな状況で果たして、90%以上を超えるトレイル率で100kmも走りきれる選手がどれくらいいるのだろうか、と。それでも終わってみれば60%を超える完走率。選手の実力はもちろん、多くの関係者や家族、協賛してくれるメーカーや自治体のアツさも感じて、とても手応えを感じたのを覚えています。いつかはきっと100マイルレースが開催できると」

——実際にはいつ、100マイルレースを開催しようと考えていたのでしょうか?

「第1回が成功したこともあり、3〜4回目くらいを目処に100マイルコースは設定しようと思っていました。けれど、途中で主催が変わったり、国立公園におけるトレラン大会に関する環境省からの指針が発表されたりして、予定した100マイルコースが白紙になったり…。でも、その間に「UTMF」や、100マイルレースがいくつか生まれたことでトレイルランナーの実力が飛躍的にアップした。僕としては、やっと開催にこぎつけたという感じなのですが、実力もともない、かつトレランカルチャーの造詣を持った選手達が数多く参加してくれるような環境になったことは、タイミングがよかったな、と感じています」

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——信越五岳の100マイルコースの魅力はなんでしょうか?

「100マイルのスタートは、110kmが始まる前日の19時30分。恒例の前夜祭が終わった後に400人がスタートするんです。110kmに出場する選手たちに声援を受けてスタートする瞬間は、また信越五岳の新たな魅力になるはずだし、とても盛り上がる瞬間になると思います。そして、今回の信越五岳100マイルはどんなに速い選手も、制限時間ギリギリの選手も“信越の夜”を経験することとなります。これまで110kmのトップランナーの選手だと、当日の朝に出発して夕方には帰ってくるという方もいました。けれど今回は全員が、“信越の夜”を経験することになる。この静寂な森や、星空を存分に楽しんでほしいですね。コースは多くの選手が妙高山の麓にたどり着く頃、朝を迎えることになります。朝陽を受けた大きくそびえ立つ妙高山はじめ、これまでにない信越五岳の山々の美しさに出会えると思います。また、妙高高原から見る斑尾山も魅力的なビューポイントといえます」

——レース攻略のコツは?

「今回からは、レースの平等性を担保するために、必携装備はペーサーに持ってもらえなくなります。ここは注意してほしいですね。そして、これまでの信越五岳と同じで、前半はとにかく我慢すること(笑)。制限時間が32時間なので、全て歩いてしまうと完走できない。我慢して、ゆっくりでもいいから走れるところは走る。けれど、それ以上にこの100マイルを気持ち良く、楽しんで走ってほしい。僕がトレイルランニングで伝えたいのは、アメリカのトレランカルチャーで感じた「走ることの楽しさ」。日本の100マイルレースだと累積標高があるコースが多くて、楽しんで走るというよりも『キツイ…』という気持ちになってしまいがちだけど、信越五岳の100マイルは走れるコース。僕が思う“アメリカイズム”を注入したレースなので、そこを感じとってもらえるととても嬉しいですね」

記念すべき第1回目となる、石川弘樹プロデュース初の100マイルレース。新たな挑戦と発見をするべく、ぜひチャレンジしてほしい。エントリーはこちらから。

また下記の日程において、石川さんが講師として登壇する信越五岳の攻略セミナーを開催。詳しくはパタゴニアHPで発表予定。

7月11日(火)19:00〜(パタゴニア大崎店)
7月27日(木)19:00〜(パタゴニア京都店)

信越五岳トレイルランニングレース2017
開催場所:信越高原(新潟県妙高市、長野県長野市、信濃町、飯綱町、飯山市)
開催日:2017年9月16日(土)〜9月18日(月・祝)
距離:100マイル/110km
募集定員:100マイル先着400名、110km先着500名、その他 ※地元枠、優先枠 ※妙高市、信濃町、長野市、飯綱町にお住まいの方で、レース運営(準備作業、メンテナンス活動等)にご協力いただける方
募集期間:2017年6月11日(日)21時〜6月18日(日)
主催:信越五岳トレイルランニングレース実行委員会
プロデュース:トレイルランナー 石川弘樹(TRAIL WORKS 代表)
後援:信越高原連絡協議会(新潟県妙高市、長野県長野市、信濃町、飯綱町、飯山市)
特別協賛:パタゴニア日本支社
協賛:グレゴリー、日本薬品開発(株)、スーパーフィート、(株)アルテリア、New-HALE、スタミナ・スポーツ(株)、コールマンジャパン(株)
協力:アメアスポーツジャパン(株)、(株)アリスト、(株)エイアンドエフ
運営協力:(株)DIRECTIONS、国際自然環境アウトドア専門学校、(一社)新潟アウトドア企画、(株)JTB中部
http://www.sfmt100.com/