(映像 松田正臣・上原源太 / 写真 古谷勝 / 文 礒村真介 / 協力 MOUNTAIN HARDWEAR )
18歳のときに初海外、初ハワイでフルマラソンを経験。そのエピソードからもわかるように、好奇心旺盛な松岡静江さんは、その後、お菓子作りという天職に出会う。2016年には仲間とともに新しいスイーツショップ「AaH bit」を鎌倉・材木座の住宅街の一角にオープンさせた。看板メニューは2種類のチーズケーキで、ほかにもアメリカンスタイルのポップなクッキーやミニバーがショーケースを所狭しと飾る。
それらはすべて、小麦粉を使用しないグルテンフリーのスイーツ。白砂糖も使っていない。林檎を加圧濾過したりんごジュースは、100%天然の甘味料がその代わりだ。しっとりとした舌触りでしっかり甘いのに、シュガーフリー。
「今までもずっとお菓子作りに携わっていましたが、走ることを日常にしていることもあって、いつの日からか『スポーツをする人に、無理なく受け入れられるスイーツを作りたい』と考えていたんです。アレルギーだから、身体にいいからと我慢して選ぶのではなく、ちゃんと甘くて美味しいのにグルテンフリー&シュガーフリー、なお菓子を目指しています」
ホノルルマラソン以来ランニングを続けていた松岡さんが、トレイルランに出会ったのは5年ほどまえ。仲間うちでのローカルな草レースのイベントに参加したのがきっかけだ。
「そのときは走るのではなく、ゴール後のトレイルランナーにふるまう食事のお手伝いをするために行ったんです。だからゴールシーンしか見ていないんですが、それがもう、私の知っているマラソンの大会とは全然違っていて。ロードランの最後って疲労困憊で必死な形相になるんですけど、トレイルランはゴールに飛び込んでくるランナーが笑顔。それを待っている人たちが拍手で迎えいれてと、応援する側もとってもアットホーム。場と空気感が共有されているんですね。同じ走るという行為なのに全然違うなあって」
走ることは、自分自身が考えている以上にもっと楽しく、そして探求し続けることができるものなのかもしれない。さっそく仲間のチームに入れてもらい、トレイルランにのめり込んでいった。
「トレイルランは当然登り坂もありますから、ハードなことはハード。だけど見方を変えれば達成感が味わえます。それからレースでは、一緒に走る相手やエイドで応援する人たちとの会話を楽しんだりするんです。そんな雰囲気が魅力ですね。トレイルランを楽しむ人たちは顔がいいんですよ」