(写真 加藤潤 / 文 小泉咲子)

馬喰町にあるカラダとココロのメンテナンス・ステーション『TRIPLE R』では、アカデミーシリーズ『Knowledge Is Power(K.I.P.)』を開催しています。コンセプトは“知識は力になる”。スポーツや食にまつわるテーマを正しく身に着け、より効果的に心身のメンテナンスを行ってもらうのが目的のトークショーです。ホストを務めるフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、今回ゲストに迎えたのは、森永乳業「牛乳はカラダに悪い」というのは本当なのか?その言説に、科学的根拠はあるのか?タブーなしで語らいます。

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中野 最近「牛乳は悪」と言いだす人がいて、信じている人も多いですが、そもそもなぜそう言われるようになったのか。彼らは「牛乳は牛の飲むもので人間の飲むものではない」「牛乳は吸収されない」と、その理由を挙げます。もちろん、日本人をはじめとするモンゴロイドには、牛乳を吸収できない乳糖過敏症の人も少なくありません。しかし、それは牛乳が悪なのではなく、身体に合わないだけ。そばアレルギーの人がそばを食べないのと同じようなことです。

また、「牛乳の量を増やすための成長ホルモンがよくない」とも。それが本当ならば、食に厳しいこの日本で、国が何も指針を出さないはずがありません。なのに、一部の研究所や医学博士が根拠もなく「牛乳はカラダに悪い」と言っていることに対して、警告を出したいのです。

たとえば、2007年~09年に、総務省が発表した牛乳消費量ランキングと、平均寿命を県別に比較します。もし、牛乳が健康によくないのなら、寿命に影響するはず。しかし、消費量の多い長野県では、平均寿命も高い。これで「牛乳は健康によくない」と言えるのでしょうか。僕は、「牛乳は健康にいい」とする立場です。なぜかというと、筋肉を作る合成反応を起こさせるたんぱく質が、サプリメントやプロテイン、たんぱく質を分解したアミノ酸が入っているドリンクと比較しても、はるかに含有量が多いんです。

カルシウム豊富な牛乳+運動で骨粗鬆症を予防

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中野 ただ、低脂肪乳や無脂肪乳は反対派。脂質があって初めてビタミンが吸収されるのに、なぜ減らしたり除いたりしてしまうのか。僕は、ビタミンと脂質が両方が入っている牛乳をおすすめしたい。もちろん毎日、牛乳を2L飲むなら脂肪の摂り過ぎですが、1杯2杯飲んだところで、生活習慣病にかかりやすくなるわけではありません。ふつうの牛乳と無脂肪乳を飲んでいる家庭を比較したアメリカの研究では、後者の方が体脂肪率が高いデータが出たくらいです。

森永乳業 脂肪分を気にされる方は、牛乳を飲む方の間で、年々増加傾向にあり、低脂肪乳や無脂肪乳の消費量が上がってきてはいます。ただ、我々としても、ビタミンやたんぱく質を牛乳からしっかり摂っていただきたいとは思います。

中野 厚生労働省が出しているデータの中で、日本人女性の摂取量が足りていない唯一の栄養素がカルシウムで、吸収のいい状態で入っているのが牛乳。カルシウムも、適度な脂肪分があることで吸収されるので、牛乳を飲むのが効率的なんです。

日本人女性の骨密度が低下しているのは、紫外線を避けようと日差しを浴びないのも大きな一因。骨を作るのに必要なビタミンBが合成できないんです。紫外線カットの日焼け止めを塗って肌はきれいかもしれないですが、中身の骨はスカスカになりかねません。ビタミンKも骨にとって非常に大事です。桁違いに含有量が多いのが、納豆。1日ひとパック食べていただきたい。

カルシウム不足は深刻な問題です。高齢になると背中が丸まっていく方がいますが、あれは姿勢が悪いからではなく、骨粗鬆症なのです。人間はどうしても前加重で、その上、加齢で骨が弱くなっているので、積み重なっている骨が潰れてしまい丸くなってしまうんです。背骨は、一回潰れると、筋トレなどでは治せません。ずっと、丸まった背中で過ごすことに……。

ただ、牛乳を飲んでさえいれば骨が丈夫になるわけではないんです。骨にインパクトを与える運動をして微細骨折を起こさせて、骨折したところにカルシウムが吸収されていき骨は丈夫になるので、壊す作業も必要なんです。テニス選手はラケットの持ち手の方ランナーは下半身の骨密度が高いのは、こうした理由からです。カルシウム摂取にいいタイミングは、空腹時。運動後にお腹がすいた時は、3時のおやつに牛乳を飲むのがおすすめです。

――以前は、牛乳といえばカルシウム豊富とよく言われていましたが、最近、メーカー側からその発信はほとんどないですよね。

森永乳業 牛乳=カルシウムというのは、消費者の理解がいちばん進んでいることなので、今はあまりしていません。たんぱく質を強調した啓蒙が中心になっています。

牛乳パワー!? 青山学院の駅伝部で疲労骨折が激減

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中野 子供たちの状況も心配です。骨密度は20歳前にピークを迎え、下がっていきます。高いピークから低下が始まればいいけれど、今の子供は牛乳嫌いだったり親御さんが飲ませなかったり、外で遊ばず日差しを浴びなかったりと、ピークが低いんですね。トップアスリートでさえそう。僕は、青山学院の駅伝トレーナーをしているんですが、生徒たちの疲労骨折が多いんです。トレーナーを始めたばかりの頃は、部員50人中10人疲労骨折している状況でした。そこで、毎食前と練習後に牛乳を飲むように習慣づけさせたんです。すると、もちろん牛乳だけの成果ではないですが、今、疲労骨折しているのはなんと1人だけ。

森永乳業 牛乳というと子供の飲み物のイメージが強いと思うんですけど、メインで飲んでいる方は60代。給食では飲むけど、ご家庭では飲まないお子さんが増えています。今日、中野さんからお伺いしたことは、大変勉強になりました。メーカーの立場ですと「牛乳はカラダにいいですよ」と言ってもなかなか伝わらないのですが、どうしたらいいかアドバイスをいただけますか。

中野 これはどんな食品に関しても言えますが、牛乳だけ飲んでいればいいわけではありません。牛乳も、納豆も、魚も肉も、野菜もご飯も、そして運動も、すべて合わさらないと。すべてはバランスです。包括的に広めてくれる専門家がいるといいですよね。

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次回『K.I.P』は10月20日(木)に!

10月20日(木)に「K.I.P (KNOWLEDGE IS POWER)」の第3回目を開催。今回は「フィジカルトレーニングはなぜ必要なのか?」をテーマにロンドン五輪・バドミントンダブルス銀メダリストの藤井瑞希選手をゲストに迎えます。世界トップレベルの選手とともにフィジカルトレーナーの重要性を説きます。またメディアでは報道されないオリンピックの裏話まで!

受付はこちらから!
http://kip-4.peatix.com/

アカデミーシリーズ『K.I.P(Knowledge Is Power)』とは
2016年春に馬喰町にオープンした、カラダとココロのメンテナンス・ステーション『TRIPLE R』にて定期的に開催されるアカデミーシリーズで、ホストをフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一が務める。
TRIPLE R公式サイト:http://afd3r.com