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(写真 onyourmark / 文 根津貴央 / 協力 salomon
山を自由に楽しむ「TIME TO PLAY」を実践している人がいる。大森英一郎さんだ。彼は、ランニングコース検索サイト『Runtrip』を立ち上げた人物。このサービスを通じて、全国各地にある素晴らしい道を求めて旅をする“ラントリップ”というスタイルを普及させようとしている。

一見、爽やかな好青年という印象の彼だが、実は元箱根駅伝ランナー。今もなお競技志向かと思いきや、もう競技は卒業したという。現在は、走るという行為を純粋に楽しんでいるそうである。

そんな大森さんが、最近強い関心を抱いているのがトレイルランニング。そこで今回、日本百名山である大菩薩嶺(標高2,057m)のループコースを走りに行くことにした。大菩薩嶺は都心からクルマで約2時間と近く、コースの傾斜も比較的緩やかで難所もなく、幅広い層に人気のエリア。トレイルランニングにも適したこの山域で、果たして大森さんはどんな楽しみ方をするのだろうか。

仲間と走る楽しさ

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スタート地点は、上日川峠(標高1,580m)の駐車場。ここからしばらくは樹林帯のなだらかな登山道である。何の変哲もない道だが、大森さんはやけに楽しそう。ペースは遅くジョギングレベル。元箱根駅伝ランナーとしては、本当はもっと速く走りたいのでは? と思って疑問をぶつけてみるとこう返ってきた。

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「学生時代は、勝つことだけしか考えていなくて、走ること自体を楽しいと思ったことは一度もなかったんです。でもようやく今、走ることが楽しくなって。だからスピードは関係ないんですよ」

部活を引退後、燃え尽きたこともあって3年ほどまったく走らなかったという大森さん。その後、楽しく走る市民ランナーとの出会いを通じて、徐々に走りはじめ、楽しめるようにもなってきた。そして、仲間と話しながら走るのが何よりも楽しいと言う。

「学生時代も仲間とは走っていましたが、それはあくまでトレーニング。過酷な練習ですから、基本的に走っている時に会話をすることはありませんでした。でも今は、コミュニケーションがすごく楽しい。仕事も年齢も立場も違う人であっても、走っていると不思議と仲良くなれるんです」

実際、この日も、ずっと喋りっぱなしだった。あっという間に唐松尾根に入り、絶景が見える雷岩を目指した。

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歩いてもいい、止まってもいい

唐松尾根を登っていくと、中ごろで樹林帯を抜ける。振り返ると、正面には雄大な富士山! というのが、晴れた日の定番なのだが、この日はあいにくの曇り空。富士山は見えなかったものの、大菩薩湖が一望できた。

大森さんは、変わらずマイペース。振り返って写真を撮ることも多かった。

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「駅伝をやっていた頃は、立ち止まることはイコール”悪”でした。でも今は違うんですよね。歩くことを楽しんでもいいし、立ち止まって絶景を眺めてもいい。それがいいですよね」

そう話す大森さんは、まさに、自然を自由に楽しんでいるようだった。

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雷岩を越えて、大菩薩嶺へとつづく樹林帯を走る。木々は瑞々しく、足元は苔むしている。大森さんは、自然の豊かさを全身で感じながら山頂へ。山頂は樹林に囲まれていて眺めは良くないが、それが逆に神秘的な雰囲気をかもし出しているような気がした。

山で淹れる最高の一杯

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大菩薩嶺を往復して雷岩に戻ると、徐々に雲が風で流されはじめていた。大菩薩峠へとつづく稜線もガスっていたのだが、ほどなくしてその姿があらわに。「おぉーーーっ!」と大森さんも声を上げる。

「普段は家の近所のロードを走ることが多いので、絶景とかはあまりなくて。その点、トレイルはこういう見渡す限りの稜線みたいなのがあるのがいいですよね。これが自然の面白さでもあると思います」

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トレイルランニングの魅力をそう語る大森さんは、その稜線を走りはじめた。スイッチが入って現役時代のアスリートの顔になるかと思いきや、表情は終始笑顔。心の底から走ることを楽しんでいた。

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休憩舎が建っている賽ノ河原まで駆け下りてきて、ここで休憩をとることにした。大森さんは、おもむろにバックパックからコーヒーセットを取り出す。

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「山で淹れるコーヒーって美味しいですよね。大自然の中を走るのもいいですが、大自然の中で食事をするのもすごく楽しい。こういう時間が得られるトレイルランニングは、旅した気分にさせてくれます」

今となっては、走ることが旅をするためのツールの一つとなっている大森さん。トレイルランニングも旅として捉えているようだ。

ゆっくりコーヒーを味わった後、大菩薩峠を経て、スタート地点である上日川峠へ。トレイルはずっとゆるやかな下り。大森さんは笑顔で駆け抜けた。

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大森さんは言う。
「僕は知らない土地に行くと、いつも地元のランナーを紹介してもらって、一緒に自慢の道を走らせてもらうんです。以前、岐阜県の白川郷に行った際には、ガイドブックには載っていない地元の人しか知らないようなトレイルコースに連れていってもらいました。なぜこの道が好きなのか、どんな道なのかといったことを聞きながら走っていると、その地域の特徴や人の暮らし、文化が見えてくる。それがすごく楽しいんです」

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トレイルランニングも一つの旅のツールとして楽しむ。
大森さんのランニングスタイルは、本当に自由で、そして魅力的だった。特に、これからトレイルランニングをはじめようとしている人は、参考にしてみるといいのではないだろうか。きっと、年齢や体力に関係なく、長く楽しみつづけられるはずだ。

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大森英一郎

神奈川県横須賀市生まれ。法政大学の4年生の時に箱根駅伝に出場。卒業後はリクルートグループの企業で営業職を2年経験。その後、地元の観光関連企業を経て2015年5月に株式会社ラントリップを設立。ランニングコース検索サイト『Runtrip』https://runtrip.jp)を通じて、生涯スポーツとしてのランニングの普及および地域資源としての道の活用に取り組んでいる。

※次回は、名古屋を拠点にハイク、ラン、自転車など幅広いアクティビティを楽しむとあるグループをフィーチャー。彼らならではの自由なハイキングスタイルを紹介します!

サロモンのベストギアを紹介

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シューズは、サロモンを代表するトレイルランニングシューズ「SPEEDCROSS4 GORE-TEX®」。摩耗耐久性に優れ、アウトソールはグリップ性能を強化した新形状。岩が多い大菩薩峠の稜線でも滑ることなくしっかりととらえ、安定した走りを支えてくれた。

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バックパックは、サロモンの「SKIN PRO 15 SET」。独自のセンシフィット・システムは、伸縮性に加えてストラップの長さを簡単に調節できるため、フィット感と安定性が抜群。ウェアやクッカー、バーナー、ヘッドランプ、ファーストエイドキットなどを収納してもブレにくく走りやすい。