(写真 久恒杏菜 / 文 倉石綾子 / 協力 Patagonia

 先ごろ、パタゴニア 東京・ゲートシティ大崎にてトークイベントが開催された。パタゴニアのサーフィン・アンバサダーである岡崎友子さんと、自然をいかした学びの場づくりに取り組み、現在は「海は学校」を主宰する内野加奈子さん、パタゴニア鎌倉店のストアマネージャー嶋田和江さんをスピーカーに迎え、「私たちの選択が、世界を変える」をテーマにしたフリートークを繰り広げた。これまでに行ってきた選択がどのような道へ導いたのか、また女性のライフステージにどのような選択があるのか。生き方も活動するフィールドも異なる3人の女性がそれぞれの立場から、自らの選択と行動、それがもたらすライフスタイルを明かす。

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 女性のプロ・ウィンドサーファーの先駆けとして世界中の海を旅する岡崎さん(写真中央)。現在はマウイ島を拠点に、女性や子どものためのウィンドサーフィン/SUPキャンプに力を注ぐ毎日だ。
 
内野さん(写真右)はハワイ大学大学院で海洋学を学びながら、伝統航海カヌー、ホクレア号のクルーとしてミクロネシアから日本へ初航海を果たしたという経歴の持ち主。2011年に帰国してからは「土佐山アカデミー」のディレクターを経て「海は学校」を立ち上げるなど、自然をベースにした学びの場づくりを進めている。
 
一方、嶋田さん(写真左)は数年前、鎌倉店のストアマネージャーを務めながら子どもを産み育てるという等身大の選択を行った。仕事と子育ての両立の日は、小さな選択の連続だという。トークショウはそれぞれの人生で転機となった選択についてのエピソードから始まった。

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岡崎 自分の中ではこれまで何か選択をしたという意識もなくて。たまたまウィンドサーフィンという夢中になれるものがあって、どうすればウィンドサーフィンをしながら生きていけるのか考えたらこうなっていたんです。そう考えるとウィンドサーフィンをやるということ自体が大きな選択だったのかも。けれど、自分の人生でいちばん大切なものは何か、優先順位をつける選択は大切だと思います。やりたいことはたくさんあっても、それを全部やろうと思ったら何かが犠牲になってしまう。でも自分の中のいちばんが見つかれば自ずとそれに集中できる。やりたいことを見つけて、それを最も大切なものとして選び取る。その選択は必要ですよね。

内野 端から見たら大きな選択をしたように見えるのかもしれませんが、別に何か大それたことをしようとか、道を切り拓こうなんてことは考えたこともないんです。まだハワイに住んでいた頃の話ですが、自分がやっていることとかこの先のこととか、答えが見えなくて迷っている時に取材を受けたことがありました。出来上がったものを見たら「ハワイで見つけた私の道」というタイトルが付いていたんですよ。さんざん迷って悩みながらも、ただその時ベストだと思ってやっていたことの小さな積み重ねが、他の人には道のように見えていたんですね。

嶋田 私は子供を産み育てるという選択をしたんですが、50歳になった時に「あの時、どうして子どもを作ろうと思わなかったんだろう」と後悔をしたくなくて、そういう決断をしたんですね。たとえ子どもができなかったとしてもそれはそれ、ただベストを尽くしたんだって、自分を納得させたかったんです。自分はどうありたいか、5年後、10年後に後悔はないか、問いかけながら選択する。そうすると、いまのこの選択に間違いはないって自信がつくんです。小さな選択を一つ一つ積みあげていった先に、自分の人生があるのかな。

まさにいま、何かを選択しようという人に向けて

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岡崎 選択することも大事だけれど、その前にたくさんの選択肢があるんだっていうことをみんなに自覚してほしいですね。道はひとつじゃないし、正解も不正解もない。人それぞれ、得手・不得手や向き・不向きがあるんです。だからみんな役割が違う。自分の役割、つまり選択肢の豊かさを知るためにも、まずは色々な遊びをして、人に会って、濃い経験をしてほしいと思います。その経験がますます選択肢を広げてくれると思うから。

内野 自分にとって何が大事か、その中からいまは何を選ぶのか。それは難しい選択だし、時に不安がつきまといますよね。日本に帰国するという選択をした時、私も本当に悩みました。日本に帰るにしろハワイに留まるにしろ、どちらが正解ということではないし、未来のことはわからない。その時は不安に思っていることを紙に書き出して頭を整理して、あとは海でひたすら泳いでいました。そんな風に海で頭を空っぽにしたら、ある日、ふと答えが湧いてきたんです。どんなに考えあぐねても、選択をしなければ行動は生まれないし、状況は動かない。選んだ先にまたスタックすることがあれば、また新しい選択をすればいい。それが、私が見つけた答えでした。

嶋田 選択って大きいアクションではなくて、例えばスーパーで買い物をすることだって選択の一つなんですよね。そういう小さな選択を積み上げていって、それが周りに良い影響を及ぼすようになれば良いなって思います。

それぞれがやりたいことを選択して自分の人生を生きる。この先に待つ彼女たちの選択

岡崎 これだけ長い時間、いろいろな人から素晴らしいものをいただいて、さすがにそろそろ、それをお返ししていきたいという気持ちが芽生えてきました。それで子どもや女性のためのキャンプを行ったり、旅をして出会った素晴らしい人たちのことを伝えたり、そういう活動をしているんです。それでもまだまだ、波がいいときは全部をそっちのけにして海に行ってしまうんですが。
 3.11の後に望郷の思いが強くなり、日本にいる時間が長くなって日本の素晴らしさをますます感じるようになりました。それでも東北の防潮堤がまるで要塞のようになっていくのを見ると、自分のできることはなんだろうって、個の力の無力さを思い知らされるんです。そうした時、私の希望は次の世代しかないなって思ったんです。これからを担う子どもたちに自然で遊ぶことを経験してもらって、これを守っていこうという気持ちを育む。その中から政治家が出て、本気で自然を守るような政策を考えてもらえるかもしれない。

内野 2007年のホクレア号の初航海で日本まで海を旅してきたんですが、実はハワイから日本よりも、その後に行った日本全国を回るツアーの方が面白かったんです。日本の海岸線って昔の姿がそのまま残っていて、本当にきれいなんですよ。あの時、一刻も早く日本に帰ってここを舞台に何かをしたいって強烈に思いました。複雑な海岸線に、海に生きる人たちの文化が残っていて、でも時代とともに消えつつものもある。それに対して自分は何ができるんだろうって模索し始めたんです。いまやっている「海の学校」は、それに対しての自分なりの答え。誰かに何かを教えると言うより、自分たちで何かを見つけられるよう、そのお手伝いをするのが自分の役割だと思っています。

嶋田 いろいろなことへのチャレンジが自分の経験値を高めてくれると思うから、チャレンジを恐れず前向きに挑戦していきたいですね。立場や状況によって選択の内容はそれぞれですが、もしその選択が自分の手に負えなくなったら周りの人を巻き込んでしまえばいいんだと思うんです。いろいろな人を巻き込んで状況を動かす、そんなしなやかさが女性には備わっているから。