ハイカーであればいつかは挑戦してみたいのがアメリカのロングトレイルだ。しかし、数百キロの行程をスルーハイクするには、まとまった休暇と綿密な計画が必須。普通の社会人であればなかなか機会を得られないのが実情だ。そんな一遇のチャンスを得たのが、明日(日本時間2016年6月4日)からジョン・ミューア・トレイル(JMT)に挑戦するヤマモトマサシさん。仕事の転機とJMTのシーズンがうまく重なり、チャレンジの機会を得ることができた。onyourmarkでは彼自身にこの旅をレポートしてもらうことにした。まずは、旅の準備編からお伝えしよう。

ハイカー憧れのジョン・ミューア・トレイル

アメリカにはロングトレイルと呼ばれる自然歩道がいくつもあり、その中で最も有名なトレイルがカリフォルニアのシエラネバダ山脈を貫くジョン・ミューア・トレイル(JMT)だ。

北はヨセミテ渓谷、南はアメリカ本土最高峰のマウント・ホイットニーの頂上(標高4418m)までの南北に延びるコース(全長340km)となっており、アメリカ3大トレイルの一つパシフィック・クレスト・トレイル(PCT、全長4,260km、映画「わたしに会うまでの1600キロ」の舞台にもなった)の一部にもなっている。

僕にとってJMTは映像や写真、実際に行った人の体験記などを見て憧れてはいたものの、その行程は2~3週間を要するためそこへ行くことは夢の様な話。

そんな折、仕事の転機を迎えた僕は一か月の休暇を取るチャンスを得た。時期は6月。JMTのハイシーズンは雪が溶けた後の7、8月ではあるものの、6月でも行けなくはないかも・・。あの場所に行けるチャンスは今しかない。そう考えた僕は1ヶ月の冒険旅行の計画を立てることにした。

まずはヨセミテをスタートとするサウスバウンドかマウント・ホイットニーをスタートとするノースバウンドかを決めなくてはいけないのだがこれはサウスバウンドとした。高度順応しながら歩けるのではと考えたのと最後にマウント・ホイットニーに登ってゴールとなるサウスバウンドのほうが何よりドラマチックだ。

最初の関門 Wilderness Permit

JMTをスルーハイクする上で避けて通れないのが、Wilderness Permitと呼ばれる許可証の存在。自然保護の観点からトレイルヘッドごとに入山可能な人数が決められており、国立公園や国有林を通過するJMTではこの許可証なしにはトレイル上でキャンプをすることができない。

スタート地点となるヨセミテでは予約分は27人、当日受付分が18人と狭き門となっている。特にシーズンである6月~9月の事前予約分は出発日の168日前に予約開始となるのだが、ここ数年は映画の影響もあってあっという間に埋まってしまうような状況のようだ。

加えて去年よりサウスバウンドする場合はDonohue Passを超えるのにもパーミットが必要になっており、これは一日あたり45人にしか発行されない。
この新設されたパーミットが厄介で、もしも取れなかった場合は、Donohue Passを避けて別の迂回ルートを通らなくてはいけないのだ。

僕の場合は情報も少ない迂回ルートを歩くのはリスクがあると判断して、いくつかのバックアッププランを用意しながら当日受付分を狙う作戦を取ることにして準備を進めていたのだが、ある日運良くキャンセルがでているのを見つけJMTの正規ルートであるヨセミテのHappy IsleからMt. Whitneyまでのパーミットを予約することができた。このパーミットを取れるかどうかは本当に運次第で、無事パーミットが取れた僕はJMTを最初から最後まで歩けることになった。

340kmを踏破するための装備と補給

JMTの全行程は340km、少なくとも約2週間の山行となる。その間の食料補給方法(リサプライと呼ばれる)を決めなくてはいけない。また、今回食料についてはマイルールとして日本のものは一切使わずに現地で調達することとした。

リサプライの方法としては主に手段は2つある
・ トレイル近くの郵便局やリゾートに事前に送る。
・ 街に降りる

1つ目の方法が一般的でとても効率がいいのだが、事前の準備が大変だなと感じた僕はリサプライについては基本的に街に降りることにして行程を立てた。その分日数はかかるが確実に食料は補給することができるし、何よりアメリカの田舎町も見てみたかった。

6月3日にHappy Isleを出発し、途中Mammoth Lakesとボルダリングのメッカとしても知られるBishopという街でリサプライを行い、6月24日頃にゴールできるような計画を立てた。さらに残雪などの影響で予定通り行かない場合の保険でトレイルから少し外れたところにあるVermilion Valley Resortにも食料を送ることにした。

今回、夏山には少し早い時期に歩くということもあって、雪が残っていることを想定して「迷ったら持っていく」を基本方針にしてギリギリまで情報を収集して装備を選んだ。

シューズは、PCTハイカーが今回歩くJMTがあるシェラネバダ山脈を越えるために作られたモントレイルの「シエラバダ」。渡渉と雪渓ありなのでアウトドライの靴が有効と考えた。

テンカラ(釣り道具)も装備に含めた。現地での楽しみと、食糧が調達できればありがたい。

JMTでは以下の必須装備がレギュレーションで定められている。

ベアキャニスターと呼ばれる容器を持つこと。これは食料を熊から守るもので持ち運ぶ食料はこの容器に入れる必要がある。

もう一つは浄水器。JMT区間ではすべての水は浄水する必要があるため必ず携行しなくてはならない。

必須装備品であるベアキャニスター

以下が、装備品リストだ。

これでJMTに出発する準備は整った。初めての海外のロングトレイル、果たして自分が最後まで歩けるのかドキドキとワクワクが入り混じる不思議な心境だがとても楽しみだ。

ヤマモト・マサシ
川崎のグループラン&バイクコミュニティ KAWASAKI BICYCLE & RUNNING COMPANY主催、TEAM JET所属。トレイルランニング、ハイキング、ファストパッキング……なんでも全力で楽しみつくしたい社会人。週末を充実させるために日々奮闘中。JMTもその一つ。