2016.04.27 - 22:22

自分を知ることがトレーニングを最大化させる。 山中亮平

(写真 八木伸司 / 文 小泉咲子)

2015年、ワールドカップでの歴史的勝利により、一気に注目を浴びた日本ラグビー界。この盛り上がりをブームで終わらせず、人気を定着させるキーパーソンのひとりが、世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」に参戦中の日本チーム「サンウルブズ」の山中亮平選手だ。身長188㎝。大きく盛り上がった背筋に、がっしりした下半身。外国人選手と比べても遜色のない、恵まれた身体をいかにブラッシュアップしているのか。日頃のトレーニング法から、ラグビーとの出会い、そしてこれからの夢。山中選手の過去、現在、未来を聞いた。

己のレベルを知ることからトレーニングは始まる

遊びたい盛りの小学生の頃、やっていたのは水泳。友達と遊ぶよりも泳ぐことを優先させ、オリンピックを目指すほど真剣に打ち込んだ。中学に入るとサッカー部に入部。校庭の隣りでやっていたラグビーを横目で眺めていると、ラグビー部の顧問から誘いがかかる。ラグビーの自由さに心を掴まれた。

「ラグビーは、ボールを持って走れるし、相手を引っ張ってもタックルで飛ばしても構わない。サッカーだったらファールになることをできてしまうところが、僕にとって斬新だったんです」

才能はまもなく開花。大型司令塔として注目された東海大仰星高校時代は、花園で優勝を果たし、早稲田大学時代には初めて日本代表にも選出された。学生時代はスキルアップに集中。身体作りの重要性に気づき、本格的に取り組んだのは神戸製鋼に入ってからだった。ランニングやスクワットで下半身を中心に鍛える曜日があれば、ベンチプレスで上半身にターゲットを絞る日もある。

「学生時代は、ウェイトトレーニングがまったく好きじゃなくて、あまりやっていませんでした。社会人になって、コンタクトのレベルが段違いに上がり、これは本腰を入れて身体を作らないといけないと気づいたんです。ラグビーはフィジカルが強くなければ勝てない。これは絶対です」

生身の身体と身体をぶつけ合うラグビーにおいて、筋力強化が欠かせないのは当然だが、必要な能力はそれだけに留まらない。自分に何が足りないのか、を把握できる自分分析能力だ。

山中選手は、ウェイトトレーニングに加え、アジリティ系のトレーニングも行うようだ。

「下半身がしっかりしてなければスクラムを押せないし、敵の隙間をすり抜けるアジリティも必要。ラグビー選手は、トータルで鍛えないとダメですね。レストを長くとってしまうと回復して意味がなくなるので、10回ベンチプレスを持ち上げたら1分休憩するだとか、ウェイトトレーニングをやる1時間は、とにかく集中することを意識しています。ウェイトトレーニングは週3、4日ですが、日本代表チームでは、毎日やっていました。エディが、ウェイトトレーニングを重視する監督だったんです。あのときのトレーニング量は、ふだんと比較すると20倍はやったんじゃないかな。しんどいんですけどやっていく内にどんどんタフになっていって、身体慣れてくるんです。追い込めばどこまでもやれるという自信になりました」

フィジカルが強くなければ、絶対に勝てない。

さほど苦もなさそうに、140kgのバーベルでトレーニングする山中選手。自分の体重に加え、さらにその分の負荷を支えるトレーニングシューズには、「がっしりとしていてほしい」と語る。

「しっかり床に足をつけて踏ん張れるように、ウェイト用のシューズには、がっちりしていてほしい。軽いとどうしても身体がぶれてしまうので。ナイキ メトコン 2 iDは安定感が高いし、足にすごくフィットしてくれるのもいいですね。しかも、NIKEiDでカスタマイズしたシューズは、世界でこれだけ。“自分だけの一足”を履いてトレーニングするとテンションが上がりますし、大事にもしたくなります」

カスタマイズするにあたり、こだわったのは、カラーだ。「あまりに選べることが多くて、これは迷うぞ、と。なのでシンプルに、所属している神戸製鋼のチームカラーの赤にしました。イメージ通りに出来上がって、嬉しいですね」

スタンドオフ、センター、フルバックと「バックスだったらどこでも」できる器用さは、スピードとパワーを兼ね備えた高い身体能力があってこそだろう。

「10番(スタンドオフ)は、ゲームをコントロールする司令塔。ゲームメイクできることが面白さでもあり難しさでもありますね。とくに難しいのは負けている局面。ミスを最小限にして、シンプルにアタックすることを心掛けます。12番(左センター)は、10番(スタンドオフ)のサポート役。ボールに目が向きがちですが、空いているスペースや他の動きを常に俯瞰で見ておかないと。個人的に好きなのは10番。ランニングプレーが自分の武器だと思っていますし、どんどん前に出て、相手を抜いていくのが好きです。でも、10番をやっていたから12番もできる。逆も然りです」

ブームで終わらせないために、大事なのは“今”。

アスリートにとって、試合で結果を出さなければ、どれだけ身体作りに取り組み、練習を重ねても意味をなさない。それが勝負の世界の掟だ。

「ラグビーをしていていちばん楽しいのは、勝利してチームのみんなと喜び合う瞬間。そこを求めて、練習であっても、試合をイメージしています」

いいプレーが出ればどんどん気持ちが乗っていくタイプ。逆に、ミスが出ると引きずりがちな面があると自覚している。

「ゴールキックを外すといいときと悪いときの差が大きいことが、数年前からの課題。いいプレーが出れば思い切ってできるんですが、ミスをすると次はシンプルに手堅くいこうとして、プレーが小さくなってしまう。ミスをしてもすぐに切り替えて、いつも思い切ったプレーができるようにならないと」

しっかりと自己分析ができ、課題も見えている。だが、完全に克服できたとは言い難いことも、自らがいちばんよくわかっている。理想とする自分へと続く道は、どのくらい進んだのか尋ねると「まだ50%」だと言う。自分の現在地を把握することは、その都度、「ミスを引きずってしまう」弱さを認めなくてはならない。しかし、この過程なくして進化は、ない。

「その通りだと思います。今の自分に何が足りないのか、課題がはっきりと見えています。だからこそ、もっとできると信じているし、実際、次のシーズンに対するいいイメージはできています。夢は、海外のスーパーラグビーのチームでプレーすること。そのためには、まずサンウルブズで結果を出さないといけない。サンウルブズでアピールできれば、日本代表にも繋がるし、海外への道も開けますから」

ラグビーブームに沸いた2015年。この人気を定着させるためにも、ますますの活躍が期待される。

「ブームに終わらせてはいけないという自覚は持っています。トップリーグも盛り上げないといけないですし、いちばん注目される日本代表戦では、ワールドカップのように結果を残さないと。今がいちばん大事な時期だと思っています」

次の日本代表戦は6月。サンウルブズでの試合も続く。秋には、トップリーグも開幕する。理想までまだ「50%」という数値が、どれだけ上がっているのか、期待せずにはいられない。

山中亮平(やまなか りょうへい)
1988年6月22日生まれ、大阪府出身。187センチ、98キロ。神戸製鋼コベルコスティラーズ所属。早稲田大学在学中に日本代表に選出された。その後、神戸製鋼に入社。