2016年夏に開催される4年に一度のスポーツの祭典。この世界大会での活躍を目指すトップアスリートを紹介したい。インタビューのテーマは、”リミッターが外れる瞬間とはー”。大舞台でこそ、最大限のパフォーマンスを要求されるトップアスリートならではの体験記をお届けしよう。

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2014年3月、出雲陸上競技大会300mで自身の持つ日本記録およびアジア記録を更新。2015年4月に行われたワールドリレーズでは銅メダルを獲得。その後、日本選手権では5年ぶりの優勝。輝かしいキャリアを誇る藤光謙司選手は、リミッターが外れるその瞬間を、「スイッチが入る瞬間」と表現する。

「海外の試合でごくまれにですが、会場の雰囲気、ライバルなど複合的な要素が重なって、『スイッチが入る』ときがあるんです。最近では、昨年のスイス・ルツェルンの競技会で自己ベストを更新したとき。スイッチが入ると動きがぐんとよくなり、気持ちも前向きになる。『いける』という確かな手応えを感じるんです」

選手生活を通じてとにかく怪我が多かった。3年前、重いヘルニアを患ったことをきっかけに、走りそのものを見直した。年を重ねるにつれて自分の身体のことを理解できるようになったから、賭けとも言えるチャレンジを決心できた。

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そうした経験から、トレーニングへの根本的な考え方も変わったという。

「若いランナーには弾けるような勢いがあるけれど、アスリートにも経験値が必要。人はそれを寄り道と呼ぶかもしれないけれど、つまずいて寄り道をして、初めて得られることがある」

真摯に積み重ねた寄り道の先に、リミッターの外れる瞬間が待っている。試合の時もタイツを着用するという藤光選手にとって、タイツは自身のベストパフォーマンスに欠かせない一要素。怪我で苦しんだ藤光選手には、タイツで保護されている安心感が最大限のパワーを引き出せる鍵となる。来るリオデジャネイロのファイナルの舞台、そこにはきっとタイツをはいた藤光選手の最高の走りがあることだろう。

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藤光謙司(ふじみつ けんじ)
1986年、埼玉県出身。300mの日本記録を持つ短距離ランナー。23歳のときに世界選手権に初出場、以来、個人およびリレーで活躍を見せる。2015年は出雲陸上300mで日本記録&アジア記録を更新、6月の日本選手権で優勝、8月の世界陸上200mでは世界陸上日本人最高記録に迫る好タイムでセミファイナル進出、と大爆発。まだまだ進化を遂げる29歳。