(動画 上山亮ニ 動画音楽 Mitsu the BEATS / 写真 八木伸司 / 文 倉石綾子)

アグレッシブでダイナミック、切れ味鋭い滑りで、日本人はもとより本場・ヨーロッパのスキー愛好家をも虜にしたアルペン・スキーヤー、佐々木明。現在は活躍するフィールドをバックカントリーに移し、プロスキーヤーとしてさらなる高みを目指している。コンマ1秒を競うアルペンの舞台から、より自由に、より究極を求める山岳の世界へ。大きな挑戦を支えるのは、アルペンの第一線で活躍していたころと変わらぬ濃密なトレーニングだ。

「トレーニングは有酸素運動とジムワークをほぼ毎日。上半身と下半身、細かな筋肉の動きを意識してみっちり。使っている筋肉の細胞の一つ一つを感じるくらい、集中して取り組みます。アルペン時代と比べると、いまのほうが根性をつけるような追い込むトレーニングをしているかな」

正しい姿勢感覚を保持するため、ウォーミングアップとして行うプッシュアップやクランチ。日常生活で意識しづらいインナーマッスルを鍛えるバランスボールトレーニング、体幹にフォーカスするケトルベル。手首のつき方、指の開き、過重の仕方、姿勢。1ミリ、1度変わるだけで効果は変わる。一つ一つの動きがどこにどう作用するか、あらゆる部位に神経を張り巡らす。

ビッグマウンテンスキーヤーとして2シーズン目を迎えた。かつては「世界一になる」身体を作っていたトレーニング、現在の主目的は「死なない」身体作りだという。

「スキーを担いで山に登り、自分のラインを決めて崖を滑り降りる。山で求められるのは、強い身体。登りに強く、登った後に最高のパフォーマンスを発揮できるような。そして山のあらゆる状況に臨機応変に対応できるような。つまりは、いかなる山でも死なない身体ということです」

急峻な山のピークに立った時、自信を持ってドロップインできるかどうかは自らが積んできたトレーニングで決まる。世界中の誰よりもハードなトレーニング、豊富な経験を積んできた。その満足感が自信をもたらす。自信は、雪上に刻まれるラインに表れる。

たった1分ほどの滑降に究極を求めるビッグマウンテンを経験して、人生に大きな目標が現れた。亡くなる直前までスキーを履き、山を滑り降り続けたプロスキーヤー、三浦敬三さん(1904-2006)である。

「敬三さんこそ、僕のレジェンド。彼のように生涯、スキーヤーであり続けたい。それが僕の考えるプロフェッショナリズムだから」

スキーヤーであり続けるために必要な、病気も怪我も弱気も寄せ付けない強靭な心と身体。それは、トレーニングでこそ育まれる。

佐々木明(ささき・あきら)
1981年9月26日 北海道北斗市生まれ(旧大野町)。身長182cm/体重86kg。3歳でスキーを始め、16歳でアルペンスキー日本代表に選出。19歳で世界選手権、その後ワールドカップでデビューと、世界を舞台に数々のフィールドで活躍の場を広げてきた。2014年のソチオリンピックでも4大会連続で日本代表に選出され日本を代表とするスキーヤーとして活動。その後競技からは引退し、様々な支援活動などを行ないつつ、自身の新たなフィールドであるビッグマウンテン(バックカントリー)スキーを主な活動の場として活躍している。