(写真 飯坂大 / 文 小林朋寛)

シーズン最終週末となった3月21日と22日の2日間、アルツ磐梯を舞台に雪山を遊びつくすべく開催されたALTS DAYS(前編の記事はこちら)。スキーやスノーボードだけでなく、映像や音楽、食も盛り込んだ今回のイベントの意図はどのようなものだったのか。発起人であるふたり、スキー誌「Bravoski」を発行し、数々のウインタースポーツのイベントを手がけるCAST inc.の山根賢作さん、VECTOR GLIDEやNORRONA、HOUDINIなどのギアを扱うFULLMARKS Inc.の田中嵐洋さんに昨今のウインタースポーツ事情を交えつつALTS DAYSの狙いについてお話をうかがった。

POPEYE誌のスキー特集はブームの後押しとなったのか

――ここ数年のウインタースポーツの変化をどのように捉えてますか?

田中  スキーに関しては板の種類が増えたのでスキー場内での遊びの種類が増えましたね。昔はただゲレンデを滑るだけだったのが、パークみたいなところを滑ったりとか森のなかに入って滑ってみたりとか、そういうカテゴリが増えてきた。

――ギアが進化することでよりバリエーション豊かにフィールドを楽しめるようになった。

山根  ここ10年〜15年くらいのスキーのギアの進化スピードは速い。FULLMARKSさんがやってるVECTOR GLIDEはドメスティックなメーカーですけど、いま日本で展開しているスキー板の8割くらいは日本以外の国からの輸入ブランド。最先端なヨーロッパや北米のシーンでの動きが反映されてどんどん進化していきましたね。

田中  海外の板っていうのは基本的に大量生産なもの。僕らはそれに対し品質の良いものを作ろうというのをコンセプトにやってます。デザインも廃れないものにこだわったり。10年経っても品質が保たれて、10年経ってもデザインが野暮ったくないというところに重きを置いてますね。

――今回の試乗会でもかなりたくさんの種類の板が用意されて、見ているだけでも楽しかったです。ところで、2013年2月に雑誌「POPEYE」でスキー特集が組まれたんですが、それ以前とそれ以降でスキーのカルチャーとしての変化はあったんでしょうか?

田中  実際にはなかったですね(笑)。盛り上がるかなとはみんな思ったんですけど、意外に腰が重かった。

――もともとスキーがあってその後にスノーボードが隆盛して、スキーが下火になった。それが長い時を経て、カウンター的にスキーの盛り上がりがくるのかな?という印象があったんですが、結局それは大きなムーブメントにはならなかったと。

田中  盛り上がりという意味では今はスノーボードの方が下火でどっちかというとスキーの方が盛り上がりつつあると思います。ただ、あの特集が起爆剤になるまでにはいかなかった。たぶん、僕の勝手な考え方なんですけど、みんなスキーの道具を持ってなかったんですよ。それと車がないからスキー場に行けないってなったんだと思う。

ハードル高そうで、費用対効果が高いスキー道具

――たしかにまずはそこのハードルがありますね。ギアと移動手段。

田中  だけど、レンタルの道具もかなり充実して揃ってるし、スキー場に来ちゃえばなんとかなる。そういうことがまだ浸透してないんですよね。実際の敷居は低いのに、印象だけで高く感じちゃってる人が多い。

――その敷居の高さって山のスポーツだけじゃないと思うんですけど。なぜかスキーやスノーボードに関してはお金がかかるとか、移動が面倒くさいとかっていう印象が拭いきれないんですよね。

田中  お金はかかるはかかるんですけどね(笑)。ただね、言いたいのは、お金がかかった分以上に面白い! そこなんですよ。費用対効果で考えたら、効果の方がすごいですよ、ウインタースポーツは。

――(笑)。その費用対効果をまだわかってない人が多いと。

田中  そうそう(笑)。

山根  初期投資という意味ではかかるんですけどね(笑)。そこからは楽しいだけだからね。

泳がないのに海へ行く人は多い。でもゲレンデとなると

――今回、東京からアルツ磐梯に来てみて、アクセスの良さも感じました。新幹線で郡山まで来ちゃえば、そこから無料バスが出てるし。3時間ちょっとで到着できる。

田中  北陸新幹線もできて、長野も富山も近くなったし。インフラが整った分、車がなくてもそれぞれのスキー場へのアクセスはよくなりましたね。

――なるほど。初心者としてもぐっとアクセスの敷居は低くなったと。

山根  加えて、スキー場側、受け手側も昔と大きく変わってきてます。例えば、初めてスキーをやろうっていう時に4,000円くらい払ってリフト券を買って、9時から3時までがっつり滑る人なんてなかなかいないじゃないですか。そういう人たちも一日スキー場にいられるような環境づくりが進んでる。例えばALTS DAYSではレンタルブーツを無料にして、スノーボードの人でもスキーの試乗ができるから1本でも2本でも滑ってみてほしいという提案なんです。滑らない時にはビアガーデンもあるし、JAZZY SPORTの音が流れてて、夜はCINEMA CARAVANで映像が見られたりする。そんな中でゆっくり過ごしてほしいんですよね。他にも女性向けのエステがあったりとか、スキーをするだけのスキー場じゃなくなっている。

――ゲレンデをひたすら滑走するだけという単一的なものから、よりアクティビティの選択肢を増やせるように受け手側も努力されている。

山根  そうなんですよ。夏に天気がよかったら、とりあえず海に行ってビールを飲もうってなるじゃないですか。けど、海に行くからといって別に泳ぐわけじゃない。スキー場もそれでいいと思ってて。スキー場に来ても別にスキーしなくてもいいんですよ、最初は。それぞれのペースで楽しみ方ができるような環境ができてますね。

――より敷居を低くするためのイベントとしてALTS DAYSが機能していく。アルツ磐梯以外のところでも同じようにイベントできそうですね。

田中  こういうイベントがシーズン中に色々な場所に移動していけるといいですね。

――スノーボードからスキーに移行してる人も多いんですか?

山根  僕は逆にずっとスキーやってたんですけど、この2〜3年はスノーボードです。それぞれ面白いんですけど、ルーツが違うんですよ。スキーは山を移動する道具としてのルーツがあるんですけど、スノーボードはスケートボードやサーフィンが雪山でもできるということで始まったルーツがある。なので、夏山をやってる方が冬も遊びたいとなるとスキーになる。という意味で言うと、最近スキーが注目を集めているのは夏山ブームに連動しているのかなとも思いますね。

田中  映画「私をスキーに連れてって」を今見るとすごく斬新なんですよ。スキーの楽しい部分が全部詰まってる。前日入りしてパーティー、山を滑って恋愛ありとか(笑)。ライフスタイルとしてのスキーをうまく表現してる。28年前の映画なんですけど、あの時代って日本人の趣味が少ないんですよね。今は趣味の多様化が進んでるんでなかなかスキーにならないと思うんですけど、ライフスタイルとしてどうスキーを取り入れることができるかはすごく重要なところ。

――スキーやスノーボードができると冬が楽しくなりますしね。

田中  滑って降りてきて、JAZZY SPORTの音楽を聴きながら。ビールが飲める。こんな楽しい冬の遊びはないでしょ。ALTS DAYSがそのきっかけ作りになるといいですね。

山根  一回目をやってみての気付きもあるし、ただ間違ってなかったという確信がある。次にしっかりと繋ぎたいです。

田中嵐洋(たなか・らんよう)
FULLMARKS Inc. セールスプロモーション。NORRONA, HOUDINI, VECTOR GLIDEなど多くのブランドのプロモーションを担当。幼少期から父の影響でスキーと登山を楽しみ、アウトドアライフ中心の人生を送る。趣味:スキー、クライミング、ガーデニング。

山根賢作(やまね・けんさく)
株式会社キャスト プロモーション事業部 所属。20代はスキーバム生活を送りながらイベント企画を始め、日本初のスキーハーフパイプ大会「KING of HALFPIPE」を運営。キャストに入社後は国内最高峰のビッグエアコンテスト「カナダカップ」のディレクターを務める。スノー業界が広がるような活動を中心にプロモーション事業を担当。趣味:スキー、スノーボード、バレーボール、トレイルランニング。