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先日、ニューヨークで開催されたNike Womens in New York(先日のイベントレポート記事はこちら)。ここに集結したのはスポーツで功績を残してきた世界的トップアスリートたちです。そこで、私たちは陸上、テニス、サーフィン、スケートボード、それぞれのフィールドでその名を轟かせる4人の女性アスリートにいくつか質問をすることに。勝つために、一番重要である彼女たちのメンタルの強さについて、少し探ってみたいと思います。

好きなことを突き詰めていったら、陸上選手になっていた
(アリソン・フェリックス)

2012年。ロンドンオリンピックでの陸上競技、200m、4×100mリレー、4×400mリレー第2走者として3冠を達成し、すべて世界新記録を更新。生きる伝説となるアリソンはどんな人物なのか? 
 

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「小さい頃から陸上競技の選手になりたいとは思っていなかったの。バスケットボールや体操も熱心に取り組んでたんです。とにかく好きなことにはすべて手を出してみたわ(笑)。陸上もそのうちのひとつ。だから、最初は色んな種目にトライした。それから、ようやく14歳のときに、短距離を自分の種目として決めたんです」

そして2年後、16歳で世界ユース選手権に優勝。華々しいデビューを迎え、その後も数々の優勝を飾りました。

「今でもそうだけど、好きなことは一つにしぼらないようにしているんです。陸上だけやっていたら、今のようなバランスの良いカラダは作れていなかったかもしれない。色々なスポーツをしたことで柔軟なカラダになり、精神面でも様々なケースに対応できるようになったのかもしれない。だから、なんでも興味があることはやってみることが大事。それと、何事も楽しんでやれることが強さだと思うんです」

気負いなく話す、その気さくな人柄に思わず、もし、陸上がなかったら何をしたいですか? と聞くと、「小学校の教師になりたかったの。それを目指すかもしれない(笑)」
と即答。彼女の強さは、何事にも捕われない“柔軟性”なのかもしれません。

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イベント中、ニューヨークで行われたナイキのイベントではアスリート同士のパネルトークの司会役をなんなくこなし、器用な一面も見せていた。

毎日スケートをし、世界中を飛び回る。まさに夢の世界です
(レティシア・ブフォーニ)

美しすぎるガールズスケーターとして注目を浴び、2013年のX Games(エクストリームスポーツの祭典)ブラジル大会では優勝。生活の中のほとんどをスケートボードの上で過ごし、世界中を飛び回る。そんな“今”を夢の世界と表現したレティシア・ブフォーニ。私たちが取材したときは、左足を骨折し、ギブスをはめていました。

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「生傷はもちろんのこと、スケートは本当にケガが絶えないの。常にコンクリートの上で回転したり、ジャンプしているから当然だけど」

常に大きなケガと隣り合わせであるのに、恐怖を感じないのでしょうか?
「確かに、とても危険な競技だから、緊張感は常に持っている。恐怖はあるけど、今の自分があるのは、絶対にスケートで世界を回りたいって、自分を信じる強い力を持ってやっていたから」

ストイックなメンタル部分をみせるも、普段の彼女はネイルやヘアサロンが大好きで、メイクだって必ず毎日するという今時の女の子。ブラジルで生まれ、カリフォルニアで育ち、サッカー、サーフィン、スカイダイビングとあらゆるスポーツができる環境にいた。その中で、スケートだけは別物でした。出会ったとき、他の競技とは全く違う、“運命”を感じたのだそう。それはまさに恋に落ちるように。スケートボードへのアツい情熱が、タフなパフォーマンスを実現させる根源にあるのでしょう。

その熱意が初めて形となったのがX Gamesでの優勝。この結果が、スケートを反対していた父親に認めてもらうきっかけになりました。今の生活について彼女は次のようにも語っています。

「毎日スケートをし、世界中を飛び回り、ブラジルやアメリカの友達と一緒にスケートをする。まさに夢の世界です」

本当にサーフィンをすることが楽しくて、毎日海に入っているわ
(カリッサ・ムーア)

史上最年少でASPウィメンズの世界チャンピオンになったカリッサ。日本においては、サーフィンによる収入で生計を立てていくことが難しく、女性となると、特にその数はしぼられます。そこで、女性サーファーとして、大きな期待が寄せられている彼女に、日本と世界の違いを聞いてみた。

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「日本で海に入ったこともあるわ。その日は波が良かったわけではなかったけど、それよりも、サーファーとして生きる環境が整っていないと感じたのは事実。オーストラリアに行ったときは本当にすばらしい環境だった。波が良くない日は、サーファー用の施設でトレーニングもできたわ。それに、サーフィンをカルチャーとして周囲が認めている感じもした。日本でもその認識があれば、もっと色んなサーファーが育つのかもしれませんね」

ではカリッサ自身はどうやって今の地位を確立できたのでしょうか?

「私は、ハワイで生まれ、ずっと海のそばで育ってきました。父はウォータースイミングのアスリート、母はスイマーだったから、物心ついたときには海で泳いでいたし、父に教わってサーフィンを4歳から始めてました。だから環境面ではかなり恵まれていたと思う。だから、サーフィンにはかなり集中できてた。ゲームで負けたり、失敗したりするとひどく落ち込んだりして。でも、それで海に入らないでいると余計気が滅入ってしまうから(笑)。海に入る。それだけで気持ちが充実するの。海に入ってサーフィンして、毎日入ればうまくなる。本当にサーフィンをすることが楽しいんです」

天真爛漫、ポジティブに生きるカリッサにパワーをもらえた気がしました。

引退することはグランドスラムでの戦いよりもタフな決断だった
(リー・ナ)

今年の2月、32歳を目前にして、彼女は自己最高の世界ランキング2位に。

決して順風満帆ではないにしても、30歳を過ぎ、引退直前まで進化し続けたリー・ナのテニス人生。歳を重ねるごとに強くなっていった彼女にとって、強さを手に入れるきっかけとはなんだったのでしょうか?
 

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「アジアのアスリートは、西洋のアスリートと比べてどうしてもカラダの規格との違いに悩みがちですよね。私もその一人だったと思います。同じトレーニングをしたとしても一緒のカラダにはなれない。若い頃はがむしゃらに練習していても、なかなか結果が出せなかった」

一時期はテニスから離れたこともあったそう。でも、それが逆に好機と捉えるように。

「自分の弱いところをしっかりと見つめ直し、そこを集中的に練習して克服することだけをやり続けた。成果が出たのが、2011年の全豪オープンです。優勝こそ逃しましたが、決勝という舞台に行けたという大きな自信になったし、そのとき何が足りないのか、はっきりしました。人は負けてこそ弱い部分を見つけることができ、その“経験”こそが強さになる、と、確信したんです」

3年後、彼女は全豪オープンを優勝するも、今年の9月、膝の故障の回復が思わしくないことなどから引退を表明しました。彼女にとって非常につらい決断だったのでは?

「自分の人生にテニスがないなんて考えられません。本当に大好きなスポーツなんです。けれども、今のカラダでは無理して現役を続けていくことはできません。とはいえ、テニスは続けられる。だから、この経験を生かして、中国に帰ってテニスアカデミーを開きたいです。もっともっと、テニスを好きになってくれる人を増やしたい。これからもテニスと一緒に生きていきます」

世界のトップとして実績を残してきた彼女たちの底知れない強さ、そのモチベーションの源となっていたものとは…。結果に固執しない広く自由な視野を持つアリソン。レティシアは、怪我をも恐れないスケートへの情熱とときめきをパワーに変えて、カリッサにとっての最大の武器はすべてを楽しみに変換するポジティブな性格だった。リーは、積み重ねた経験で自信を手に入れてきた。それぞれの個性が大きく現れた回答でした。

モチベーションを持続させ、高いパフォーマンスを発揮させるには、まずは自分を知ることが大きな第一歩となるのでは。そんな思いが今回、彼女たちの回答から感じとることができた気がします。芯の強さを持つ、女性トップアスリート4名の言葉から、あなたは何を思いますか?