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(文 村松亮)

昨年、W杯出場を決めながらも同年10月の東欧遠征でセルビア、ベラルーシに連敗を喫し、アルベルト・ザッケローニ監督の解任論まで浮上したサッカー日本代表。不振を振り払うきっかけとなったのが、同年11月に行われた欧州遠征の2試合ではないだろうか。言わずと知れた強豪国であり、FIFAランキング8位のオランダ戦では、2点差を追いつき、2−2のドロー。さらにW杯シード国にして、FIFAランキング5位のベルギーには3-2の逆転勝利をおさめた。

そしてこの欧州遠征で注目を集めた選手のひとりに、山口蛍の名前が挙げられるだろう。

ヤットさんと、ハセさんのところに
もっと食い込んでいかなくちゃいけない

ザッケローニ就任後、不動のボランチとしてスタメンに名を連ねていた遠藤と長谷部のコンビに代わり、この2試合のスターティング表の中には山口蛍の名前があった。

「オランダ戦のスタメンを知ったのは、当日の、試合直前のミーティングでした。(スタメンを)予想していなかったので、ビックリしましたね。ヨーロッパ組がいる中で初めてのスタメン。最初は緊張もありましたけど、時間が経つにつれて、徐々に慣れていきましたね。多少なりとも自分の良さは出せていたとは思いますけど、もっともっと出さなくちゃいけないし、出せたと思います」

代表初スタメンでもあった山口が感じた欧州遠征の手応えとは?

「“世界との差”っていうのをすごく感じましたね。ピッチで対面する多くの選手はテレビで見ていた選手ばっかりで「到底無理やろな」って気持ちが最初はありました。けどその一方で通用する部分もあった。主に守備の部分でその手応えはありましたけど、それでも全然足りない部分の方が多かったのは事実です。まず、シンプルな技術の差がありますよ。あとは2試合を振り返って印象的な選手を挙げるなら、常に嫌なポジションを取ってきてマッチアップが多かったオランダ代表のファン・デル・ファールト選手と、ベルギーでのムサ・デンベレ選手ですね。後者に至っては、ボールも取れなかった。これからの課題は、技術面ではすべてをレベルアップしていかないといけない。トラップとパス、シュート、どれももっともっと(レベルを)上げる必要があると思いますね」

※ヤット・・・遠藤保仁選手の愛称
※ハセ・・・長谷部誠選手の愛称

最も大切にしていることは
“すべてにおいて走り切ること”

プロ・アマ問わず、スポーツに取り組む人の多くは、課題と目標を持っているもの。レベルの差こそあるが、それこそがトレーニングのモチベーションとなるからだ。ここで山口自身の課題を整理するならば、個人としては全体的なスキルアップ。チーム(セレッソ大阪)としてはここ一番の勝負強さ。A代表においては、持ち味を出し切ること。この“持ち味を出し切る”、つまり自分の持ち味を自覚し、発揮すること。

この自意識を持てることは効果的なトレーニングをおこない、レベルアップするためには必要不可欠な要素だと言える。

「僕は基本的にどの試合でも90分フルで出たいっていう思いが強い。プレースタイルを自己分析するなら、広範囲に動けて守備やったらいろんなところをカバーして、攻撃やったら深い位置からどんどん飛び込んで行く。この運動量っていうところが持ち味だと思ってます。とくに自主練で絶対にやるメニューだとか、これといったオリジナルの特別メニューなんてものはないんですけど、敢えていうなら「走り込み」はついて回りますね。距離や時間をいつも決めているわけではないんですけど、長くて50分くらい走り込みます。そもそもトレーニングメニューって、やっているスポーツによっても様々ですし、所属しているクラブやチームによっても違う。共通して大切なのは、100%出し切るようにやることだと思います」

トレーニングで心掛けているのは、100%で取り組むこと。もちろんそれはフィジカルにおいてもメンタルにもおいても。意識を高く持つことこそ、山口のトレーニングの核となる部分だ。

「サッカー選手として一番大切にしている信念とか考えっていうことは、やっぱり「走り切ること」なんです(笑)。何度も言うように僕は運動量が持ち味で、1試合1試合しっかり走り切るっていうのを常に目標にしています。試合においても、トレーニングにおいても、結局すべてにおいて「走り切る」っていうのが僕のテーマなのかもしれません」

山口蛍(やまぐち・ほたる)
1990年10月6日生まれ、三重県出身。2003年、セレッソ大阪アカデミーに加入し、2009年にトップに昇格。2012年のロンドン五輪では全6試合に出場。2013年東アジア杯でA代表に初選出されると、同年11月の欧州遠征はオランダ戦、ベルギー戦に先発出場を果たす。