6月22日に行われたVTJ 2ndでは得意のチョークスリーパーで見事な一本勝ち! もしかしたら、このランニング・トレの効果があったのかもしれません。試合前に行われたセミナーの後半をどうぞ。

前回の#06ストレッチ編でしっかり身体をほぐし、十分準備がととのったところで、いよいよランニングの基本的な部分に触れるためのセミナーがスタート。短距離走とMMA、共通して求められるのは豊富な瞬発力。それを生み出すための基本の動作をレポートします。

ランニング基本姿勢の補強
ジャンプしてからランの動作へ

体幹の力をスピードに変えていく動作を身体にしっかりと覚えさせるトレーニング。①踵をつけて股関節を開いたつま先立ちの姿勢で腰を下ろす。相撲の立ち会い前の蹲踞の姿勢をイメージして、②その姿勢のまま、手をうしろで組んで身体を起こし真っすぐにすることを意識して立つ。③下腹部、ストレッチでしっかり伸ばした腸腰筋を意識して身体の中心に力を入れる。④膝の柔軟性は使わず、身体に蓄えた力を地面に弾くイメージでジャンプ。⑤5回ジャンプを繰りかえし、その感覚を保ったまま走りだす。

ランニング基本姿勢の補強
膝のクッションを使わずにジャンプ

膝の柔軟性を使わずにジャンプする、力をダイレクトに地面に伝えるということをより強い感覚にするためのトレーニング。固い一本の棒が垂直に跳ねているようにイメージしてジャンプします。サポートする側は、ジャンプした到達点で両肩を押さえつけるように軽く負荷をかけるようにします。力が抜けてしまってバタバタにならないように注意して、バスケットボールをドリブルするようなスムーズな動きになればOK! 

Point!!
「膝を使わずにジャンプする」ということが感覚的にわかりづらい場合は、「エアなわとび」をしてみて、少しずつジャンプの幅を高くすると、その感覚を掴みやすい。膝のクッションを使ってしまうと、力が抜けてしまってスピードが出ない。シンプルな動作だが、秋本さん自身もこのトレーニングを本格的に取り入れることで、劇的にタイムを短縮できたそう。その経験をもとに、スポーツ選手や子どもたちのセミナーの取り入れてみたところ、やはり効果が得られた。

ランニング基本姿勢の補強
ジャンプしながら前進、そしてラン

蓄えた力を地面に伝えて、さらにそれを前に進むためのスピードに変えていくための応用編。その場で5回ジャンプしたあとに、ジャンプ5回で前進してからランの動作に入ります。前に進むことを意識しすぎて、身体が前屈姿勢にならないように、また逆に真っすぐにすることを注意しすぎて顎があがらないようにすることが大切。ジャンプの距離を延ばすことは重要ではないので、姿勢と力の入れ方を意識すること。

ランニング基本姿勢の補強
つま先、前脛骨筋のトレーニング

体幹に蓄えた力を地面に伝えて、足が流れず、しっかりスピードに変えるために必要なトレーニング。つま先から負荷をかけること前脛骨筋を鍛えることができる。サポートする方は両手で足の甲を抑えて手前に引き、軽く負荷をかける。負荷をかけられるほうは膝から上の力に使わないように意識し、膝から下の脛の筋肉、前脛骨筋を使うこと意識することが重要。左右を変えてともに10〜15回程度。終えたあとは、動かした部分を意識しながら軽くランニングしてみると、その効果が体感できる。

Point !!
従来のトレーニングでは何か物足りなさを感じていたという秋本さんが、自ら試行錯誤しながらバージョンさせてきたもの。この補強トレーニングが何のためのものなのか「意識する」というのは、宇野さんがこれまでこの連載で何度となく口にしていたこととリンクする。

「ランニングはすべての基本」だということを改めて実感できたという宇野さん。熱心な表情で、新しい発見に驚きながら、道場生のみなさんと有意義な時間を過ごせた様子。セミナー終了後に、おふたりに感想をうかがいました。

−−セミナーを終えての感想は?
宇野  楽しかったです! 新しい発見というか、気づいた部分が多くありました。

−−ストレッチに関しては柔軟性や可動域の拡張、ランニングに関しては体幹の強さなど、いつも意識している部分との共通点も多かったのでは?

宇野  フォームやディテールを意識することで、さらに効果が得られるということ実感しました。例えば、軽く反動をつけてストレッチすることも、自分はわりと無意識のうちにそうしてしまうんですが、それが理論的にも正しいということがわかったり。ジワッと負荷をかけて伸ばすほうがよくて、反動をつけるのはNGなんだという印象があったので。

秋本  入浴後のストレッチなどそういった時には、じわじわと負荷をかけてストレッチをするといいんですが、今日は暖かったのと、みなさん身体が十分ほぐれた状態だったので。短距離走や瞬発力を求められる競技スタイルを考えて、直前の準備をイメージすると、今日紹介した方法がより高い効果が得られます。「ストレッチ・ショートニング・サイクル」といって、走ることもハードルも、ストレッチ運動の連続なんですね。格闘技も見ていると、瞬発的な動きが多いので、共通する部分が多いかなと。ウォーミングアップの時から、筋肉の態勢を整えて準備させておくという考え方が大事ですね。

−−ひざの使い方にしても、柔軟に使ったほうがいいという印象がありましたが、固く保つことで瞬発力に変えていくというのは目から鱗でした。軟式と硬式のテニスボールの違いをイメージすればいいのかなと。

秋本  MMAの映像を見ていたときに、態勢を低く構えてひざを使って動作に入る選手と、自然体で構えながら、おなかに力が入っていてゼロの状態からスーッと動く選手、大きく分けて2パターンあるなと思いました。陸上は体幹に力が入っていないと速く走ることができないんですが、これはどのスポーツでもゼロから動き出すための瞬発力という点では共通していることだと思います。

宇野  以前だとレスリングがベースのMMAの選手はどうしても重心を低く構えることが多かったんですが、UFCを中心にMMAのトップクラスで闘っている選手で膝を曲げて構える選手をほとんど見かけなくなりました。いい意味で棒立ちに近いスタンスのほうが、デイフェンス面でも、強度が高い打撃ができるという点でも今のMMAでは有利なんです。以前に比べて、闘う時のスタンスというか間合いが開いてきていて、その点でも動作に入る瞬発力は必要だと思います。

−−股関節の柔軟性、足からつま先の使い方の部分は、テイクダウンされて下になってしまったときの対処のトレーニングとして有効なのでは?

宇野  下から相手をフックしたり、サブミッションの仕掛けにも必要な動きです。やっぱり格闘技に通じる部分は多いですね。つま先をほぐすトレーニングは、慧舟會でもよくやってましたし、スキップも延々とやらされてました(笑)。当時はメニューの中にあって何となくこなしていた感じがあって、それがどんな形で自分のスタイルに影響するのかという意識は薄かったですね。理論的な話をうかがって、初めて気づくことが多いです。自分たちが教わってやっていた慧舟會の補強はつらかった思い出なんですが、理にかなったものだったなと思います。

−−MMAの選手にとっても、日常のトレーニングにフィードバック出る部分がかなり多く見られたように思います。

秋本  僕たちはただ走るだけというシンプルな競技なので、そこをどんどん追究していくところがあって。走ることそのもののトレーニングだけじゃなくて、たまにはスキップしたり、また坂道や砂浜など地形をいろいろ変えて走ったり、スキップしたりする。いかに効果的なトレーニングをやって、それをどう実践につなげていくか、そればっかり考えてやってきました。今日は、その“ザ・ランニング”というものをMMAとどうつながっていくかを意識して組み立ててみました。

宇野  走ることって基本なんだと、あらためて思いました。今日はありがとうございました。

(写真 高木康行)

秋本真吾(アキモト・シンゴ)
2012年まで400mハードルのプロ陸上選手として活躍。アテネ、ロンドンオリンピックの選考会をはじめ、ヘルシンキ、大阪、ベルリン、韓国世界陸上の選考会に出場し、日本のビックゲーム常連の400mハードラーとして活躍した。200mハードル アジア最高記録、日本最高記録、学生記録保持者。現在はプロハードラートして全国各地でハードルのデモンストレーションや陸上教室などを実施。プロ野球チーム、Jリーガー選手のスプリントコーチとしても指導を展開。引退して1年、地元の福島県「大熊町」を想い陸上クラブチーム「ARIGATO OKUMA」を立ち上げ、所属し100m選手として陸上界に現役復帰を果たした。http://www.akimoto405.jp/

【onyourmark UNO VOICEアーカイヴ】
#01 総合格闘技がDo sportsである理由
#02 総合格闘技とはすべてが邪魔にならない競技
#番外編 ランナーへ向けたエクササイズを紹介
#03 あらゆるスポーツにつながるエッセンス
#04 闘うための身体を作る「食」の在り方
#05 ココロと身体のメンテナンス
#06 RUNNING for MMA(前編)

宇野薫(うの かおる)
総合格闘家(UNO DOJO所属)。プロレスへの憧れから、高校時代はレスリング部に所属。修斗でプロデビュー。第4代修斗ウェルーター級王者についたあと、総合格闘技のメジャー、UFCに参戦。惜しくもベルトには届かなかったが、トップ戦線で活躍。宇野薫公式ブログ:http://ameblo.jp/caoluno/ Twitter:@caoluno 宇野薫が主宰する総合格闘技道場「UNO DOJO」公式ホームページ:www.unodojo.com

(文・聞き手 浅野じたろう(ATAQUE) / イラスト ナカオ☆テッペイ)