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日常の食生活についてうかがった#04「闘うための身体を作る「食」の在り方」に続いてお届けするのは日々のコンディショニングについて。

「リラックスしなきゃ」と思わないように

ココロと身体、まずは気持ちの部分について。音楽や瞑想など、アスリートによってリラックス方法もさまざま。リングのなかでの鋭い視線と強い表情に変わって、取材時などはとても柔和な印象で語りかけてくれる宇野さん。そのメンタルを裏付けするリラックス方法とは?

−−日常的に意識して取り入れているリラックス方法はあるんでしょうか。

特に意識はしてないですけどリラックスしているとすれば移動中ですね。練習場所までの移動の車や電車のなかでは比較的リラックスしています。電車だと寝ちゃってることが多いんですが(笑)。

−−例えば音楽を聞いたり……?

音楽は邦楽を中心に聞いてます。試合前だと自分のものも含めて入場テーマのコンピレーションを聞いてテンションを上げたり。うーん、どちらかというと、つとめて「リラックスしなきゃ」とは思わないようにしてるのかもしれないですね。

−−いつも気が張りつめた状態ではないと思うんですが、そのへんはオンとオフの切り替えをしていると。

リラックスというか気分転換といったほうがしっくりきますね。一番の気分転換はフリーマケット。自分で出店するのもそうですが、試合の直前でなければ少しの時間だけでものぞきにいったり。学生の頃から変わらないルーティーンのひとつで、もう本当に好きなんです(笑)。だから、フリーマーケットに出店してる常連さんには『またいる!』って思われてますよ、きっと。気分転換をしている場でファンの方にも声をかけていただけるもの嬉しいですね。あとは、ひと昔前みたいにバカ買いすることで気分転換はせずに「欲しい!」ってものを厳選して買うようにしてます。

−−そのときはスイッチは完全にオフにして。

まず格闘技のことは考えてませんね。日頃は減量で食欲をコントロールしてるせいか物欲がふつふつと湧きだしてくるんです。以前に比べれば我慢できるようになったんですがこの物欲はコントロールしづらいですし、違うスイッチがオンしている状態かも(笑)。もうひとつは、子どもたちと一緒に父のお墓参りに出かけることも気分転換になってます。実家がある横須賀はそんなに遠くないので、試合が決まった時、試合前、試合後と節目に足を運ぶんですが、やっぱり住み慣れたところでもあるので心休まる感じがします。

質のいいトレーニングをしたいという思い

必要以上にリラックスすることを意識しないことが、宇野さんにとって一番のリラックス法であって、さらに上手にオンとオフと切り替えることで、トレーニングや試合に集中できている。どうしても酷使することになる身体、フィジカルについてプロならではのメソッドとは?

−−フィジカルのメンテナンスという点で特に気をつけていることはありますか?

練習前のウォーミングアップを大事にしてますね。開脚して前に胸がつくまで身体をほぐして、股関節や肩甲骨の可動域を広げ、腰など全体的に柔軟性を気にしながらストレッチをしてから練習します。特に寒い時期は身体が硬くなってるのがわかりますから、暖かい時期よりウォーミングアップに時間を割いてます。

ウォーミングアップに時間をかけることは、怪我を減らすことにも繋がり、パフォーマンスが良くなって練習の質も上がると思います。ここをないがしろにしてしまい、練習が終わったあとに『今日調子悪かったなぁ』って感じることは気持ち的にも下がってしまうので良いことは無いですね。また、前準備ということでは、怪我をしていたり、体調が悪い時はしっかり治してから練習するようにしています。中途半端な状態で練習しても更に大きな怪我を誘発したり、二次的に負担がかかり大きく調子を落としたりするのでそのへんの管理は慎重になります。休むのも練習のうちですね。

−−怪我のお話がでたところでうかがいますが、定期的に主治医に診てもらうといったようなことは?

今は大きな怪我はないのでお医者さんに通ってはいないのですが、状態が少しでも良くないなと思ったら後輩が開いている接骨医にいって診てもらってい、その状態より酷くならないようにできるだけ速く対処して、ます。怪我をしてプランどおりにトレーニングできなくなってしまうのは時間がもったいないですし、試合で最良のパフォーマンスを発揮するためにもできるだけいい状態で練習をしたいという思いがあります。

−−これまでで経験した一番大きな怪我は?

ちょこちょこと怪我はしてるんですが、大きかったのは(アンドレ・)ジダ戦の時(2007年HERO’Sミドル級トーナメント準決勝)の顎の骨折ですね。試合中に噛み合わせがズレてるなってわかったんです。ここで勝っても次の試合はできないって考えました。試合後に同じような怪我をしたことのある選手から病院で見てもらったほうがいいよって勧められて病院に行ったらすぐ入院することになって。いつもなら試合が終わったら今まで我慢していたものを食べられる!ってことなるんですけど、口さえあけられない状態で辛かったですね。

−−キャリアを重ねることで、重要視するようになったことはありますか? 若いころはあまりやらなかったけど、今はしっかりやっていることは?

クライオセラピーといってトレイルランニングやトライアスロンの選手が、レース後にプールで身体をクールダウンさせるメンテナンス法を練習場所の近くにある銭湯の水風呂を使ってやっています。練習で温まった身体を水風呂に入りいったん冷やして、またお湯でゆっくり温める。これを繰り返すことで代謝が良くなりますし、血流の緊張と弛緩の繰り返しで筋疲労の回復にもいいんじゃないかと。特に試合前の追い込みの時期に疲労が溜まっていたりすると効果があるんです。これはシャワーだけで済ませるのとはかなり違いますし、(ヴァンダレイ・)シウバは練習後に氷水に浸かったりするそうですよ。

あとは、一般的なアイシングもそう。練習中に負った程度の軽い怪我や酷使した部分は練習後にしっかり冷やして時間をおかずにケアします。若かった頃は、軽い怪我ならよくなるまで騙しだましやって、中途半端なケアで済ませることも多かったのですが、今は、まずそうならないようにして、なってしまったらしっかり相応のケアをします。トレーニングで筋肉を使った分だけ、熱量があがっているはずなので、特に痛めてる箇所やリハビリなどしている部分はしっかりアイシングすることで熱を下げることが大事です。

−−風邪やインフルエンザにも時に気をつけたり?

風邪っぽいかなと思ったら、エアボーンというアメリカのサプリメントや、マルチビタミンを摂ったりします。気持ちの問題かなとも思うときもあるのですが、摂らないよりは摂って未然に防いだほうが良いかなと。風邪予防ということでは うがいと手洗いはマメにやります。手を洗うように習慣づいたのはアフタヌーンティーでバイトしていたお陰ですね。

–前回(#04)に続いて、アフタヌーンティーで学んだことが多いですね(笑)

いろんな勉強をさせてもらいました(笑)

次回はすべてのスポーツの基本となるランニング、特に「MMAにおいて有効なラントレーニング」について、特別講師お迎えしてお届けします。お楽しみに。

宇野薫(うの かおる)
総合格闘家(UNO DOJO所属)。プロレスへの憧れから、高校時代はレスリング部に所属。修斗でプロデビュー。第4代修斗ウェルーター級王者についたあと、総合格闘技のメジャー、UFCに参戦。惜しくもベルトには届かなかったが、トップ戦線で活躍。
宇野薫公式ブログ:http://ameblo.jp/caoluno/
Twitter:@caoluno
宇野薫が主宰する総合格闘技道場「UNO DOJO」公式ホームページ:www.unodojo.com

【UNO VOICEアーカイヴ】
#01 総合格闘技がDo sportsである理由
#02 総合格闘技とはすべてが邪魔にならない競技
#番外編 ランナーへ向けたエクササイズを紹介
#03 あらゆるスポーツにつながるエッセンス
#04 闘うための身体を作る「食」の在り方

(文・聞き手 浅野じたろう(ATAQUE) / イラスト ナカオ☆テッペイ)