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着地の衝撃を、前に進むエネルギーに!
走りの新しい扉が開く「ベアフット•ランニング」

編集部女子チームが、カラダを張って話題のトレーニングをレポートする「あのトレーニングをやってみた」。今回は、裸足、あるいは裸足に近い感覚のシューズで走る「ベアフット•ランニング」。走っては膝をいため、やる気喪失気味も否めないへたれランナーのわたくしが、あなたの知っているようで知らない裸足ランの世界に足を踏み入れてみました!

颯爽と走る裸足ランナーに導かれ、裸足王子に入門

「最近トレラン(トレイルランニング)がアツいぜ!」と鼻息荒くトレラン体験取材に行ったわたくし(a.k.a.へたれランナー)ですが(リンク参照)、その時に目を奪われたのが、5本指シューズを履いた数名の参加者たち。地下足袋を思わせる底のうっすいシューズで、音も立てずに颯爽と急な山道を駆け上がるその姿はまるでNINJA…。聞けば、トレラン同様、ここ数年、そうした裸足に近い感覚を再現したシューズや、リアル裸足で走る「ベアフット(裸足)•ランニング」がめちゃくちゃ注目を浴びているというではありませんか!
早速、ベアフット•ランニング第一人者である吉野剛さん、別名“裸足王子”率いる「日本ベアフット•ランニング協会」主催のイベント、「裸足DE RUN! 入門編in本厚木」に、さらなる鼻息の荒さで潜入してまいりました。

着地の衝撃は、吸収させずに利用する!

「みなさん、関節は本来、何のためにあると思いますか?」
と、吉野さんの講義でイベントはスタート。
「“曲げるため”、ですよね。
関節は、“衝撃を吸収するため”にあるわけではないんです。
『着地したときの関節への衝撃は体に悪い。だから、いかにその衝撃を吸収させるか、いかにその衝撃を殺すかが重要』。そう考えている人も多いと思いますが、実際は、着地の衝撃を殺さないで、その衝撃のエネルギーを利用して走るほうがずっと効率がいいんです」
着地時の足にかかる衝撃は体重の2倍だ3倍だと聞いておびえたり、衝撃を減らすというインソールに心惹かれたり。とかく衝撃=悪者のように無意識に考えてしまっていたわたくし、「衝撃を利用する」という言葉に、早くも目から鱗がボロボロと落ち始めます。
着地でかかった負荷を推進力に変えて、前に進む。それは動物や人間本来の走り方。その走りを実現させやすい、実感しやすい方法のひとつが、裸足ランニングというわけ。ふむふむ。

まずは基本3原則、重心•体のバネ•足の引き上げ

講義後はいよいよ実践です。シューズを脱ぎ裸足になってグラウンドに降りると、ひんやりした地面を感じ、感覚が研ぎすまされていく•••きゃっほー!•••いい年こいて異様にテンションが上がります。

まずは、ベアフット•ランの基本から。
1つめ、両足をそろえて立ち、足のまわりに円を描く。直立した姿勢から、前に体を倒していくと、円の枠から外れたところで体が倒れ、足も前に出る。これで“重心が先に移動してから体が動く”感じをつかみます。
2つめ。その場でジャンプ。足首と膝をやわらかくして、“体全体のバネを使う”ことを意識。足が地面に着地した、その瞬間に上に飛ぶ。ぴょーん。着地の衝撃を下に吸収させてしまわずに、上に飛ぶエネルギーにする。衝撃をエネルギーに変える状態を体感します。
3つめ。その場で走ってみる。ここで地面が削れている人は注意。地面を後ろに蹴るのではなく、“足をまっすぐおろして、まっすぐ引き上げる”練習をします。

ボールのような回転をイメージして、ドタドタからスタタタへ

「この3つを組み合わせると、体が勝手に前に進んでいきますよ」と吉野さん。
その言葉通り、吉野さんの走りは、ササササササ、とか、スタタタタタタと形容したくなるような、無駄な力が全くかかっていない動き。音もなく静かに素早いその姿はまさにNINJA…。いきなりそんな走りは当然ムリでしたが、それでも意識を変えてみると、ドタドタ感のあった走りが、スタタタ感に近づいてきます。

ベアフット•ランは、足首、膝、股関節をやわらかく使いながら、着地時の面積がより広く安定したフォアフット(足前部)で着地することも重要。アキレス腱やふくらはぎの筋肉を伸ばして足裏の前方部分から着地し、足全体が着いた瞬間には、その衝撃はもう前に進む次の一歩へのエネルギーに。
「足は着いたらすぐ前!ボールのように回転していくイメージです。“中を入れて、外は抜く”とよく言うんですが、体のコアはキープしたまま、外側はリラックス。体を柔らかく使って」

裸足で自然に還る。走る意識が変わる。

その後も、2人1組になって後ろの人を蹴らない走り方の練習や、ラダーを使っての無駄なく早く駆け抜ける練習など。実践的なトレーニングを経て、裸足ランのメカニズムと、裸足ランで体を鍛えていけば足をいためにくいことを深〜く納得、何度も心の“いいね!”ボタンを押しました。
でも、実はこの日一番感じたのは、
「裸足って本当に気持ちいい!テンション上がる!もっと走りたくなる!」というごくごくシンプルなこと。
今まで、フルを走るのにはどんなシューズがいい?スパッツは?テーピングは?そんなことにとらわれていたり。長距離走っては膝をいため、走ることが苦痛になりかけていたり。そんなひとりのへたれランナーの前に、本当に「走る」ことそのものを楽しめそうな新しいトビラが、今まさに開かれたよう。
もちろん今まで使ってこなかった筋肉を使うので、いきなり裸足で長距離ランは無謀。まずは足の裏の感覚を体で感じて、自然に還ってみる。そこから何かが始まるかも。
ベアフット•ランは単なるブームではなく、「走る」ということへのひとりひとりの意識を改めて見つめ直すきっかけになる。そんな気がした本厚木の朝なのでした。

今回のメニュー
「裸足 DE RUN!入門編 in 本厚木」
参加費 一般1,500円、裸足ランニングクラブメンバー1,000円

日本ベアフット•ランニング協会
2010年5月、裸足ランニングの第一人者である吉野剛氏と、裸足の素晴らしさに共鳴するメンバーによって「一般社団法人日本ベアフット・ランニング協会」を創設。裸足ランニングの普及活動を開始。2011年9月に「裸足ランニングクラブ」を本格始動。代々木公園(織田フィールド)を中心とした毎週月曜日の裸足ランニングクラブ練習会や裸足ランイベント「裸足DE RUN!」などを定期的に開催している。http://www.hadashirunning.jp/

吉野剛 profile
日本ベアフット•ランニング協会理事長。日本における裸足ランの第一人者であり裸足走法の研究者。サンディエゴ州立大学修士課程で裸足ランの研究を行い、アメリカで裸足ランブームの火付け役となった一人としても数えられる。
2007年には「Wall Street Journal」の表紙を飾る。著書に「裸足ランニング~世界初!ベアフット・ランナーの実用書~(ベースボールマガジン社)」。

(イラスト 鈴木仁/文 飯島由美子)

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