2012.12.14 - 06:00

プロ・アスリートのトレーニングを日常に取り入れる アディダス・トレーニング・アカデミー

(文 中島良平 / 写真 橋本英之 / 動画 TOTAL TIME 1:48 記事最下段

アディダスと契約する世界でもトップクラスのトレーナーが来日して、独自のトレーニング方法を紹介するイベント『アディダス・トレーニング・アカデミー』が開催されました。ステージ上のトレーナーがゲストや何名かのアシスタントと一緒にデモンストレーションを行い、一般の参加者たちがフロアで一緒にトレーニングをするというこのイベント。計5つのプログラムのうち、モデルのSHIHOさんがゲストとして登場したのが、アシュリー・サージアントさんが指導する「ヨガ・トレーニング」。そして、プロサッカー選手で浦和レッズに所属する槙野智章選手が登場したのが、ブレント・キャラウェイさんがトレーナーを務める「パフォーマンス・トレーニング」。2つのプログラムに参加し、終了後にはトレーナーの2人に話を聞きました。

自分の体に耳を傾けること

「アディダスヨガは、ハタヨガを現代にアップデートしたものです」と語り、「ヨガ・トレーニング」をスタートしたアシュリーさん。ゲストとして参加したSHIHOさんも、アシュリーさんのイントロダクションを聴くと、次のようにプログラムへの期待を語ります。「トレーニングと連動したヨガということで、ハード系のものを予想してきましたが、もっと体の内側にじっくりと効いてくるようなプログラムなんですね。日常のヨガに取り入れていきたいので、楽しみです」

ハタヨガとはそもそも、「フィジカルの修練としてのヨガ」というとても単純なことを意味していて、遠い昔のインドで、男性が家族と離れて山奥にこもって行ったような修行の側面が大きかったといいます。そうした古くから伝わるアーサナ——前屈やねじり、伸展などを取り入れたさまざまな坐法——を尊重しながら、生理学をはじめとする現代科学の視点を取り入れてアップデートされたのです。

「かつてのヨガからの大きな変化は、意識的にアライメントに着目するようになったことです」とアシュリーさんは言います。頭から手足の指先までをつなぐ一本のラインが通っていて、全体が連動していることを意識しながらヨガをすることが、現代のトレーニングとして効果的なのです。

「現代人の多くが忙しい日々を送っていて、自分の本来のリズムとは違うスピードで日々を過ごしていると思います。都会で生活していれば、自然のリズムともかけ離れている。自然のリズムに戻るためには、まず自分の体に耳を傾けること。体の中心を意識して、バラバラな方向を向いた体全体をそこにしぼっていくことが重要です。体を中心にしぼっていく意識を持つことで、自分の体をきちんと把握して、自分の本来のリズムに気づくことができます。そうすることで、体や意識が拡散することを防いで、地に足をつけることができるのです」

呼吸と体の動きの密なつながり

「ヨガ・トレーニング」で行われていたのは、床に座った状態で背骨が空に向かう意識を持つためのポスチャー(姿勢)の連続や、四つん這いになって手の指で地面をつかみ、背中の伸展を繰り返すなど、自分の体の各パーツのつながりを意識させる運動。スローなペースではあるものの、全身をくまなく使ってポーズを変えながら動いていくと、確実に汗をかいて手足の先までがトレーニングされていることを感じられます。

「トレーニングをするときにとても大切で、またトレーナーとして教えるのが一番難しいのが、呼吸と体の動きのつながりです。自分の呼吸がどのように刻まれているかを聞き、そのペースを意識しながら、呼吸を追いかけるように体を動かすことが大切です。それが、自分の体のリズムにあった体の動きです。呼吸と動きのつながりを大切にしながらヨガを続けていくと、体の隅々にエネルギーが回って、全体に緊張と癒しのバランスが生まれていることがわかるはずです」

アシュリーさんは、スポーツを楽しむ人たちが無理をしてトレーニングする必要はないと言います。あくまでも、自分が興味を持っているトレーニングや、そのときにしたいと思えるものを適量、忙しい日は10分ヨガをするだけでもいいのではないかと。
「ヨガが素晴らしいと思うのは、あらゆるスポーツをする体をサポートしてくれるから。体を動かすとき、止まるときのバランス感覚や、ケガをしにくい強さなどが身に付きます。そして、体と意識がオープンになって、無理せずにいろいろな競技を楽しめる体ができあがる。個人でできるものなので、普段ランニングやバイクなど色々な競技を楽しんでいる人には、自分なりの取り入れ方を見つけることをお勧めします」

パフォーマンス・トレーニングのサイクル

一方のブレント・キャラウェイさんがトレーナーを務めた「パフォーマンス・トレーニング」は、より動的な、筋力や瞬発力、持久力などと直結したトレーニング・プログラムです。足できちんと地面を感じ、激しい動きと緩和を繰り返しながら体幹を鍛えると同時に、やはりケガをしにくい体作りをすることも目的としています。ブレントさんはトレーニングの大前提を次のように語ります。

「まず、適切なウォームアップが非常に重要です。ストレッチを丁寧にするのと同時に、意識を活性化させて、体を動かすモードに自分を持っていくこと。体にストレスをかけるトレーニングによって強度が得られるわけだから、この最初のプロセスが大切なのです。そこから、筋力につながるセッションを始めるのですが、上半身の前面、上半身の背面、足の前面、足の背面、という順番で筋肉に負荷をかけていきます。それがパフォーマンス・トレーニングの基本構造です」

プログラムとしては、ゆっくりと腕を曲げながら5秒かけて体を下ろし、素早く上に戻る腕立て伏せや、その場でのランニングをできるだけ早いステップで行うトレーニングなど、具体的にどこの筋力を鍛えているのかを説明しながら進行します。スピーディーな動きのトレーニングの後にはストレッチ、そして、負荷をかける筋肉を移動してまたクールダウン、というサイクルが筋肉と心肺機能のトレーニングにおいて効果的なのです。

一連のプログラムを体験すると、槙野選手は日常のトレーニングにも参考になることが多かったと語ります。

「体幹を意識してトレーニングする、体幹そのものを鍛える、これはいつも大切だと思っています。今日のプログラムを受けてその大切さを再確認できたのはもちろんですが、緩急をつけて、姿勢のよさを保ちながらトレーニングすることが体幹を鍛えるのと直結していることがわかりました」

日常的に無理せず体を動かす

「onyourmarkのユーザーと同様に、私も会社に所属するトレーナーとして仕事があります。クライアントとの定期的な電話のやり取りやメールの処理、会議もあるし、プログラム構成はデスクで行います。そういう日常で重要なのは、夜にきちんと睡眠をとり、朝は健康的な食事をとること。

そして夕方に仕事が終わったら、少し体を動かすといいでしょう。家で10分トレーニングするだけでも構いません。ストレッチと腕立てやスクワットなどを5分程度して、もう5分を使って、もし加圧トレーニングでもできれば理想的です。短い時間でもできるだけ全身を使って、上半身をねじりながら腕を上に伸ばすなど、体幹を意識する動きを取り入れるようにしてください。上半身、下半身、前面、背面がバランスよく使われれば、その夜にいい睡眠がとれ、次の日にはおいしく朝食が食べられるはずです」

スポーツをして自分の記録を伸ばすこと。そして、ケガをしない体を作ること。そのためには、日常的に継続できる無理のないトレーニングが重要なのです。ブレントさんにアディダス・トレーニング・アカデミーの感想を聞くと、フィジカルとメンタルが密接に結びついていることを示唆する答えが返ってきました。

「改良する点を見つけるのが難しいぐらい、アディダス・トレーニング・アカデミーは的確に構成されていたと思います。参加者たちが私のインストラクションにあわせて体を動かし、笑顔を見せていました。アカデミーに参加して体を動かすことに幸せを感じていることが伝わってきて、こちらに返ってくるエネルギーもとても大きかった。とてもいいセッションができたと思っています」

(TOTAL TIME 1:48 |撮影 動画 室伏努)

 

アシュリー・サージアント
ニューヨーク出身、現在はカリフォルニアのレイク・タホ近くに在住。幼いころにヨガを始め、Anusara Yoga®において最年少でインストラクターの資格を与えられる。2008年には、Anusara Yoga®創始者のジョン・フレンドのアシスタントをしながら世界を旅し、スタディに時間を費やす。2011~12年のアディダス・グローバル・ヨガ・アンバサダーを務める。

ブレント・キャラウェイ
カリフォルニア州カーソンのAthletes’ Performance社でディレクターを務める。ワールドカップやワールドシリーズのチャンピオン、NFLのプレイヤーなど、多くのプロ・アスリートのトレーナーとして活躍する。アディダスのグローバル・パフォーマンス・コーチとして、アディダス・トレーニング・アカデミーの各国へのツアーに参加している。