細かく言うと、脂肪細胞には2つのタイプがある。
一つは白色脂肪細胞。体脂肪を溜めたり、ホルモンを分泌したりする働きがあり、脂肪細胞と言えば普通は白色脂肪細胞を指す。もう一つは褐色脂肪細胞。その仕事は白色脂肪細胞とは真逆で、体脂肪を燃やすことにある。

体脂肪を燃やす機能を担っているのは、細胞内にある「ミトコンドリア」という葉巻状の細胞内器官(オルガネラ)。筋肉細胞はこのミトコンドリアを大量に含み、運動時に酸素を介して体脂肪を効率的にエネルギーに変えて消費している。加えて、じっとしているときでも筋肉は体脂肪をせっせと燃やしている。筋肉のミトコンドリアには「UCP3」という特殊なタンパク質があり、体脂肪を空焚きして熱に変え、体温を保っているのだ。

褐色脂肪細胞は筋肉細胞と似た性質を持っている。内部にミトコンドリアをたくさん含み、ミトコンドリアにはUCP1というタンパク質があり、筋肉と同様に体脂肪を空焚きして熱に変える。
筋肉量が少ない子どもでは筋肉に変わって褐色脂肪細胞が体温をキープしているが、筋肉量が増えた大人では褐色脂肪細胞がなくても体温が保てる。ゆえに大人には褐色脂肪細胞は少ない。褐色脂肪細胞が増えると体脂肪は燃えやすくなるが、大人では全身で数十gしか含まれていないのだ。

けれど、後天的に褐色脂肪細胞を増やす方法がある。それは運動。運動をすると筋肉細胞から「アイリシン」という物質が分泌される。このアイリシンには白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞へコペルニクス的に変える働きがあるのだ。
ひと口に運動といってもさまざまだが、アイリシンを分泌しやすいのはランニングのように長時間続けて大量のエネルギーを消費するもの。走ると痩せやすいのは、褐色脂肪細胞の増量効果のおかげもあるのかもしれない。

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(文 井上健二/イラスト 清水将司)