太ると増えてくるのが体脂肪(中性脂肪)。体脂肪は無秩序にあちらこちらに溜められているのではなく、専用の容器に入っている。それが脂肪細胞。カラダには250〜300億個という膨大な数の脂肪細胞が用意されている。
ところが脂肪細胞の役割は、体脂肪の蓄積だけではない。脂肪細胞の集合体である脂肪組織は、全身の代謝や免疫をコントロールする数々のホルモンを分泌する内分泌器官、すなわち“内臓”としての役目も担っているのだ。

脂肪細胞から初めて見つかったのは「アディプシン」という免疫作用に関わるホルモン。続いて見つかった「レプチン」は世界中に大きな衝撃を与えた。なぜならレプチンには食欲を抑える作用があったからである。
食欲の中枢は脳にある視床下部。レプチンは視床下部にある食欲中枢に働きかけて食欲にブレーキをかける。「このホルモンを投与したら食べ過ぎが防げて痩せるかもしれない!」という希望的観測から、レプチンはギリシャ語で「痩せる」を意味する「レプトス」から名付けられた。

しかし、希望ははかない泡のように消える。太った人ではレプチンが出ているのに、レプチンが効かない「レプチン抵抗性」が起こっていたのだ。レプチンの効き目を悪くするのは、同じく脂肪細胞から分泌される物質。まだまだその振る舞いにはナゾが多い。

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(文 井上健二/イラスト 清水将司)