膵臓は肥満とも深く関わる。膵臓が分泌するインスリンは“肥満ホルモン”だからだ。
血糖値が上がるとインスリンは肝臓や筋肉に血糖を取り込ませて血糖値を下げるが、肝臓と筋肉に貯められる糖質(グリコーゲン)には上限がある。最大でも肝臓で70〜80g、筋肉で200〜300gほどしか貯められないのだ。そのうえ糖質を大量消費する激しい運動でもしない限り、両者のグリコーゲンのタンクは空ではない。
そこで肝臓と筋肉が引き取れない血糖を最終的に引き受けるのが、脂肪細胞。インスリンは脂肪細胞に働き、血糖を取り込ませて中性脂肪に合成する。
脂肪細胞では安静時のエネルギー源として中性脂肪が分解されて血中に放出されているが、インスリンはこの脂肪分解も抑制する。脂肪の合成を促し、分解を抑制するゆえに、インスリンは肥満ホルモンと呼ばれるのだ。
脂肪細胞の中性脂肪は本来、飢餓に備えた備蓄エネルギー。糖質を中性脂肪に変えるインスリンの働きは飢餓を乗り切るために不可欠だったが、現代のように3食糖質を食べて動かない生活をしていると、肥満を招くだけなのだ。

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(文 井上健二/イラスト 清水将司)