まるでバルーンのように内臓は変幻自在に形を変えるが、胃ほどその大きさを大胆に変える臓器は他にないだろう。
空腹時、食べ物が入っていない空っぽの状態では胃の容量はわずか100mlほどしかない。だが、食べ物を詰め込むと最大15倍、1,500ml前後まで広がるのだ。

これだけ伸縮性に富んでいるのには、それなりの理由がある。
口から食べた物は食道を通り、いったん胃に貯められる。胃は心臓のような筋肉質のアスリートタイプ。3層の筋肉が活発に伸縮しながらフードプロセッサーのように働き、胃壁から分泌される大量の消化液と食べ物を一緒にかき混ぜて粥状にする。粥状になった消化物は、胃の出口である噴門から小腸の入り口である十二指腸へと少しずつ押し出される。

多少暴飲暴食しても消化吸収が滞らないのは、小腸の負担にならないように胃が消化物をちょっとずつ送り出すから。
栄養素の種類によって胃の滞在時間は異なり、主食のご飯やパンなどの糖質は2〜3時間、主菜の肉類や魚介類などのタンパク質は4〜5時間、そして植物油などの脂肪は最大10時間ほども胃に留まる。

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(文 井上健二/イラスト 清水将司)