効果的なトレーニングをするには、まず自分を知ることから。
自分の身体能力を客観的に測って、弱い部分を強化するためのトレーニングを紹介する「大人の体力測定」。第12回は日常的にスポーツする人ほど硬くなる、股関節外旋の柔軟性を測定します。

テーマ:スポーツする人ほど硬くなる?股関節外旋の柔軟性

測定方法   
①椅子に浅く座り、太ももが床と平行になるように調整する。
②そこから、左足の外くるぶしを右の膝の上に乗せるように置く。
③左手で左膝を上から押し込む。
④この時の左膝の位置と右膝の位置の差で、股関節外旋の柔軟性を判断する。        
⑤同様に左足も行う。
        

ポイント  
①膝にねじりの力を加えると痛みがある人は行わないこと。
②くるぶしを乗せると膝に当たって痛い時には、膝にタオルを薄くたたんで乗せても良い。
③降ろしている方の足は、太ももが床と平行でないと測定の基準がズレてしまうため、膝の曲げ具合などで調整する。
         
評価
非常に良い ・・・・手で押さなくても左膝が右膝とほぼ同じ高さまで下がる
良い    ・・・・左膝が右膝よりやや高いが、手で押し込めば同じ高さになる
普通    ・・・・手で押し込んだ時の左膝の高さが右膝より5cm以内で高い
努力が必要 ・・・・手で押し込んでも左膝が右膝より5cm以上高い
悪い    ・・・・左膝が右膝より5cm以上高いが、手で押し込んでも全く左膝の位置が
変わらない
非常に悪い ・・・・左くるぶしが右膝に乗せられない

股関節外旋の動きが硬いと何がいけないのか

股関節外旋とは、簡単に言えば「つま先を外側に向ける」という動き、別の言い方をすると「太ももの正面を外側に向ける」という動きのことです。
日常動作で言えば、「あぐらをかく動作」がそれに当たります。スポーツで言えば「相撲の四股を踏む動作」の時の股関節の動きをイメージすると分かりやすいと思いますが、その他にも、バスケットボールのディフェンス、バレーボールのレシーブ、野球の内野手の守備など、ほとんどのスポーツで股関節の外旋動作が必要とされます。
その際、股関節がより外旋されている方が股関節の動きの自由度が高く、結果的にスポーツパフォーマンスが向上するので、スポーツプレイヤーには股関節外旋の柔軟性が必要とされるのです。バスケットボールを例に、具体的に見てみましょう。

例)バスケットボールのディフェンス
股関節が外旋できると膝を大きく横に開くことができます。すると骨盤を立てやすくなって、上半身を起こしやすくなり、腰を落とした時の重心位置が身体の中心にきやすくなります。重心が身体の中心にあると前後左右どちらに重心移動することも容易になるので、反応スピードが上がるため、ディフェンスのレベルが向上します。
逆に股関節が外旋できないと膝が外に開かず、結果として腰を落とした時に骨盤が前傾してしまい、重心がかなり前方に傾いてしまいます。後方へのフェイントをかけられたら一発で抜かれてしまうでしょう。

股関節外旋の柔軟性に影響を与える筋肉

股関節が外旋しにくいということは、逆の動き、つまり内旋させるための筋肉が硬いということを意味します。内旋とは太ももを内側にねじる動きのこと、要するに内股の姿勢にすることです。
内旋筋群=股関節を内旋側に引っ張る筋肉が硬いと、股関節が外旋しにくくなってしまうのですが、この内旋させるための筋肉というものは単独では存在せず、正に多くの筋が少しずつ内旋の力を出し合って行っています。
直接内旋だけを行うのではないのですが、股関節内旋の力を発揮する筋肉は以下の通りです。

恥骨筋
薄筋
大腿筋膜張筋
小臀筋
中臀筋
半腱様筋
半膜様筋

上記の筋肉は基本的には、股関節を前後左右に動かす筋肉になります。スポーツの場面で股関節を前後左右に動かしている時には、これらの筋群は常に短縮を繰り返しています。
そして、スポーツで動かした後に放置しておくと、これらの筋群が股関節を内旋方向に引っ張ったままの状態にするため、外旋の柔軟性が失われてしまうのです。つまり、日常的にスポーツをする人ほど、股関節の外旋が硬くなりやすいと言えるので、注意が必要です。
測定の結果が思わしくなかった方は、日頃から外旋ストレッチをしっかりと行い、柔軟性を高めておきましょう。

改善エクササイズ

プローンフロッグ(足を横に開いた外旋)

   

方法
①フローリングなどの滑る床で、膝を90度に曲げて四つん這いになり、両膝の下にタオルなどを敷く。(膝が床に直接あたると痛いため)
②膝は90度に曲げたまま、徐々に横に滑らせるように両膝を開いて行く。
③骨盤を床に押し付けるイメージで限界まで行ったら、そのまま30秒キープする。
④可能なら胸を床に付け、骨盤を更に床まで押し付ける。

ポイント
①動作中は膝を90度に曲げた状態を重視する。膝が曲がりすぎると外旋レベルが低くなり、効果的でない。
②腰が反らないように注意する。腰が反っている時はすでに動きの限界に来ているので、それ以上骨盤を床に押し付けても効果は変わらない。
③理想はイラストのように、股関節も90度、膝関節も90度で骨盤が床まで着く状態。股関節と膝関節の状態を意識しましょう。
④痛みを感じるまで行うと、かえって筋肉が緊張して柔軟性は向上しない。痛みを感じる手前程度を維持することが重要。
                   
プローンエクスターナルプレス(足を前に伸ばした外旋)

 

方法
①左膝を90度に曲げて横に倒し、左膝が骨盤に対して真っ直ぐ前を向く位置に置く。
②後ろ足はできるだけ後ろに伸ばしておく。
③骨盤をできるだけ正面に向けたまま、可能なら上体を前に倒す。
④30秒キープして、反対側も同様に行う。

ポイント
①動作中は左膝を90度を維持すること。90度以上に曲げてしまうと、ほとんど外旋の効果が無くなるので効果的でない。
②左膝は正面に向けておくこと。左膝が外側に逃げるとやはり外旋の効果が減少する。
③左のかかとを右手で押さえておくと、左膝を90度に維持しやすい。
④痛みを感じるまで行うと、かえって筋肉が緊張して柔軟性は向上しない。痛みを感じる手前程度を維持することが重要。

いつも伝えていることではありますが、スポーツのパフォーマンス向上は、単純に筋肉、筋力がすべてモノを言うワケではなく、その柔軟性がとても大切な要素になります。スポーツを続けていて伸び悩みを感じている方は、ぜひ今までのアーカイブも参考に、各部位の柔軟性を高めてみてください。

(監修 清水忍/イラスト atsushi ave)

【大人の体力測定アーカイブ】
#01 ハムストリングスの柔軟性
#02 上半身のバランスを司る広背筋の重要性
#03 身体のコントロール能力を確かめよう
#04 パフォーマンス向上&肩こり解消にも!肩周りの柔軟性
#05 体力低下は脚筋力低下から始まる
#06 姿勢の維持に大きな役目を果たす腹筋力の測定
#07 憧れの開脚!横開脚の柔軟性
#08 人は常に姿勢が崩れてる?バランスと調整力
#09 その場足踏みで、骨盤のねじれを自覚しよう
#10 体幹を鍛えるだけでは意味がない?体幹連動性の測定
#11 ここが硬い人は要注意!前ももの柔軟性