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けっきょく雨季は遅れてやってきた。しばらく雨の日々が続いたが、傘はささずに切り抜けた。

今週に入って徐々にサンフランシスコらしい元の姿を取り戻しつつある。気候の良さだけでサンフランシスコに住むことを選ぶ人が多いというのには本当に納得。これからまたサンシャインデイズがはじまる。雨季を経てこの地がより一層好きになった。

ずっと縮こまっていたせいか、外に出たいという気持ちがはじけて無性に自然に浸かりたくなった。自然を浴びたいなら山の中でしょ。ということで今回はトレッキングへ。

マリンカウンティにはトレイルがとにかくたくさんある。家の庭や裏山からトレイルへ通じていて、手軽にトレイルランニングを楽しめたり、山道を犬の散歩へ出掛けるのが日常。アウトドア好きにとっては魅力的な環境がすぐそばにある。

今回登山へ選んだ場所は、Muir Woods。ここは樹齢1200年以上、平均で600~800年のRedwood(セコイア)が保存されている国定公園。“スターウォーズ・ジェダイの帰還”で惑星エンドアの舞台にもなった場所らしい。

この国定公園は通常、入場料やパーキング代がかかるところが多いけれど、今回はローカルならではの無料で入れるルートで行くことに。序盤は、ゆるやかな下り坂を降りて徐々に森の中へ入っていくと、木漏れ日が頭の真上から差してきて神々しい気分になった。それから大樹にも驚いた。太くて、強くて、オーラみたいな何かを放っていた。

根元が黒くなっている樹がいくつかあることが気になり後で調べてみると、これは過去に起きた山火事によるものだという。セコイアの森では20年に1度ぐらいの頻度で落雷等による自然発生的な山火事が起こるそうだ。むしろ、セコイアが生き続けるためにはこの山火事が必要不可欠。

山火事が地表に積もった枯れ葉や植物を焼き払い、覆われていた地面に太陽の光を与える。セコイアは、山火事の熱で球果をひらき種子が落ちて発芽する。1200年生きてきた樹だと、60回もの山火事を経験していることになる。幾度もの山火事を乗り越え、大きく成長した今の樹が存在する。

ここ数年日本ではアウトドアブーム。生活環境はどんどん人工的な物に囲まれていくなかで自然に触れたい、かえりたいと思うのは当然な流れ。特に山に魅了される人が多いのは、こうした生命力を持つ樹木に引き寄せられ、本来の力を取り戻したいと身体が感じるからなのではないかと思う。

人間はいつのまにか一人歩きをし、まるで自然の一員ではないような顔をしながらたくさんのモノを独占し、その結果失ってきた。現にセコイアの樹は火事や白蟻などに強いということから住宅材として重宝され、それを理由に乱伐され、今では北カリフォルニア沿岸部でしか見る事ができないそうだ。でもそれに気づいた人達の思いによって、国定公園にして守られている今がある。

気づいたのなら取り戻せばいい。生きている限りはいつでもその時点から始めることができる。長く長く生き抜いてきた樹木達を知ることで、トレッキングの醍醐味を感じ取れた気がした。

Cumi Honda
1983年生まれ、千葉県出身。幼少時代をインドネシアで過ごす。
アパレルPRを経て、2011年9月からサンフランシスコに在住。

【SF LIFEアーカイヴ】
#01 自分らしさを知れる街
#02 未来を整えるということ
#03 自然治癒の話と不便を選ぶこと
#04 壊れたマウンテンバイクが教えてくれたこと