効果的なトレーニングをするには、まず自分を知ることから。
自分の身体能力を客観的に測って、弱い部分を強化するためのトレーニングを紹介する「大人の体力測定」。第11回は身体の中で最も強くて大きい筋肉、前ももの柔軟性を測定します。

テーマ:最も強くて大きい筋肉、前ももの柔軟性の測定

測定方法    
①うつ伏せに寝て右膝を曲げ、右手で右の足首を持つ。
②可能なら左手もあわせて両手で右足首を持つ。
③可能なら手で引っ張って右のかかとをお尻に引き付ける。        
④可能ならかかとをお尻につけたまま右の膝を床から浮かす。
⑤同様に左足も行う。
以上を実施した時の状況で判断する。

        
評価
非常に良い ・・・・両手で足首を持ち、かかとがお尻に着いた状態で膝が床から5cm以上挙げられる
良い    ・・・・両手で足首を持ち、かかとがお尻に着いた状態で膝が少しだけ床から挙げられる
普通    ・・・・両手で足首をもち、かかとがお尻に着くが膝が床から挙げられない
努力が必要 ・・・・両手で足首を持てるが、かかとがお尻に着かない
悪い    ・・・・足首を両手で持てず、片手しか届かない
非常に悪い ・・・・足首まで片手も届かない

前ももは酷使されている

前ももの筋肉は、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と呼ばれています。全身の筋肉の中で、最も強くて大きい筋肉で、あらゆるスポーツ動作、特に走ったり跳躍したりする時に強い力を発揮します。
この大腿四頭筋、名称にも四とある通り、実は4つの筋肉の総称になっています。
4つの筋肉とは「大腿直筋」「外側広筋」「内側広筋」「中間広筋」です。足を動かす時に働く大腿四頭筋は、日頃から酷使されやすい場所ですが、その中でも「大腿直筋」という筋肉が、特に酷使されています。
というのも、大腿四頭筋の4つの筋肉は基本的には「膝を伸ばす」ための筋肉なのですが、唯一、大腿直筋だけはそれに加えて、股関節を曲げる動き、つまり、もも挙げのような動作も担当するのです。
例えば、サッカーで強くボールを蹴る動作や、キックボクシングでローキックを蹴る動作、ウォーキングやジョギングで前に足を振り出している時の動作がこれにあたります。
言いかえれば、膝を伸ばすだけの他の筋と違い、大腿直筋だけはいつも余分な仕事をしていることになります。
そしてよく使う筋ほど、そのまま放置すると硬くなりやすいのです。

大腿直筋が硬いと腰痛の原因に!?

実は、大腿直筋が硬いままだと、腰痛の原因になると言われています。それはどういうことでしょうか。
解剖図を見ると分かる通り、大腿直筋は骨盤からスタートしている筋です。それゆえ、この筋が硬くなって縮んでしまうと骨盤が前方に引っぱられることになります。その結果、骨盤の前傾が起こりやすくなります。
骨盤の前傾が起こると、上半身が前方に倒れるような状態になってしまうため、無意識のうち腰を反らす姿勢を取って上半身だけ後方に引き戻そうとします(いわゆる反り腰の状態)。
この時に腰を反らそうと頑張っているのが「脊柱起立筋」と言われる、姿勢を維持するための筋肉なのですが、この筋肉に過度な緊張を継続させると腰背部が張り、腰痛へと発展してしまうのです。
つまり、前ももが硬いせいで腰痛になってしまうというわけですね。
この腰痛の場合、腰をマッサージすれば一時的には痛みは取れますが、腰が反るという原因を取り除かない限り、すぐにまた腰痛を繰り返すことになってしまいます。

大腿直筋が硬いとパフォーマンスが落ちる

このように、大腿直筋が硬いと骨盤が前傾してしまうので、スポーツの動作中も骨盤が前傾したまま=身体の重心が前にきたまま、行わざるを得なくなります。本来、重心は身体の中央にあるのが正しい位置なので、重心が前方にずれてしまうと、何をやるにしてもパフォーマンスが低下してしまいます。

例えばマラソンランナーの場合、大腿直筋が柔らかいと、骨盤を立てたまま(重心を身体の中央においたまま)、足を大きく後ろに送り出しやすくなり、歩幅も伸びます。一方、大腿直筋の硬い人がランニングをしても、走りながら足を大きく後ろに送り出そうとすると骨盤が引っ張られて前傾してしまい、重心が前方に行き過ぎて前足が出しにくくなり、歩幅が伸びないことになります。
もちろん、ヨガやダンスなどでは、骨盤を立てたまま大きく足を後ろに伸ばすポーズは全て困難になります。ヨガで行う鳩のポーズや、ラクダのポーズなどは大腿直筋が硬いと、ポーズが取りにくくなるはずです。

酷使されやすい大腿直筋は、特にその柔軟性のケアが重要になるのです。

改善エクササイズ

   
方法
①右膝の下にタオルを厚めに折って敷き、右膝を乗せる。
②左足は大きく前に踏み出す。
③右の足首にタオルを回して右手で持ち、骨盤立てた状態で構える。
④そのまま骨盤を前方に押し出す。
⑤そこから足首に回したタオルを引っぱり右膝を曲げる。
⑥そのまま30秒ほどキープし、同様に反対の足も行う。
⑦上記を左右交互に3セットほど行う。

ポイント
①動作中はできるだけ骨盤を立てておくこと。
②可能な人はタオルを使わず直接足首を手で持ってもよい。
③骨盤は立てたまま、できるだけ前に突っ込むように押しだすこと。
④この時に腰が痛いと感じる人は、実は骨盤が前に倒れて腰が反ってしまっていることが考えられるので、無理をしないで骨盤が立てられる範囲で行うこと。

大腿直筋を始めとする大腿四頭筋は、スクワットやレッグプレスなどのトレーニング効果が出やすく、鍛えるのが比較的容易な部位と言われています。筋力トレーニングの後にも、このようなストレッチをしっかり行って、柔軟性のある筋肉を身につけることが大切なのではないでしょうか。

(監修 清水忍/イラスト atsushi ave)

【大人の体力測定アーカイブ】
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#04 パフォーマンス向上&肩こり解消にも!肩周りの柔軟性
#05 体力低下は脚筋力低下から始まる
#06 姿勢の維持に大きな役目を果たす腹筋力の測定
#07 憧れの開脚!横開脚の柔軟性
#08 人は常に姿勢が崩れてる?バランスと調整力
#09 その場足踏みで、骨盤のねじれを自覚しよう
#10 体幹を鍛えるだけでは意味がない?体幹連動性の測定