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(写真:1924年パリ オリンピックにおけるデューク・カハナモクとジョニー・ワイズミューラーの握手)

オリンピックでの名勝負の後、選手同士で交わされる固い握手と抱擁—。そんな感動的なシーンに「待った」をかけるコメントが発表され、世界的に物議を醸しているようです。

この発言は、英国オリンピック協会の主任医師イアン・マッカーディー氏によってなされたもの。約550人の選手団と450人のサポートスタッフに対して、健康へのアドバイスをまとめたリストの中で「最高状態でパフォーマンスを行うためには怪我だけではなく、感染による病気にも細心の注意を払うべき」と主張。病気のリスクを最小限に抑えるためにも、感染症を予防するよう努めること、特に手指の衛生状態には特に気をつけることが必要であると述べています。選手村でのドアノブ、スプーンやフォークなどの使用にも警鐘を鳴らし、更には試合前後の握手、不特定多数と握手する可能性の高いレセプションでの振る舞いにも注意喚起、握手禁止を促す発言をしました。「全ては選手たちが夢を台無しにしないため」というのが彼の主張です。
 
この医師の主張に対し、オーストラリアのオリンピック委員会のスポークスマンが「我々は喜んで友情の手を差し伸べる」と述べたり、アメリカの同委員会も「我々はオリンピック精神を受け入れ、多くの国籍の多くの異なる選手と出会い挨拶し対話することを促す」と述べるなど、各国からも批判のコメントが相次ぎました。
 
これを受けてイギリス本国でも「いくらなんでも過剰すぎだ」という非難の声が強まる事態に。イギリス政府は「手をせっけんで洗うなど常識的なことを注意してほしいが、握手を禁止する理由はない」との医師の見解を否定するコメントを発表。保健省も同様の声明を発表しました。
 
今のところ、英国オリンピック協会は「礼儀や挨拶に基づいた握手を辞退したりはしないけれど、代わりに手を洗うこと、そして感染しないために手指用のジェルを携帯する」との折衷案的なコメントを発表したことで事体収束をはかったようです。
 
果たして名試合の握手の後、選手たちが即座にジェルを塗りこむ光景がTVで見られたりするのでしょうか!?
 
紳士の国、イギリスから起こった今回の議論。あなたはやはり「やりすぎ」と思いますか?それとも「これぐらいはしないと」と思いますか?

(文 佐藤美加)