2012.02.22 - 05:00

捨てることで得られるもの、less is moreを考える

スポーツの新たな潮流

一昨年発売されたベストセラー『BORN TO RUN』はすでにご存知のことでしょう。人類最速のタラウマラ族や素足で峡谷を駆け抜けるベアフットランナーズの姿に、そして「ベアフットランニング」という究極の走法に出合い、走りの概念が変わったというランナーは少なくないはずです。裸足で走ること、それは足の裏全体で大地を感じて走ること。これにより自然で無駄のないランニングフォームを身につけた、なんてメリットも。あるいは、ここ数年でトレンドとなった「ウルトラライトハイキング」あるいは「ファストトレッキング」。超軽量ギアを携え、あるときはギアを自作し、身軽に野山を楽しむという術を覚え、ハイカー、クライマーたちはアウトドアの新たな醍醐味を知ったのではないでしょうか。

捨てることで得られるもの

両者に共通しているのは「捨てる」という概念でしょう。足をしっかり守ってくれるシューズを「捨てる」。ヘビーデューティな装備を「捨てる」。そして既成概念を「捨てる」。なぜ捨てるのか?「はだし」あるいは「ウルトラライト」など軽くミニマルな装備は、自分の体や精神面へのプレッシャーはもちろんのこと自然環境への負荷も低く、行動範囲がぐっと広まることを意味しています。そして何よりもミニマルであることにより自分と自然との距離が縮まります。そう、スポーツシーンにおいて何かを捨てて「ミニマル」になることは、いまや正義と言えるのではないでしょうか。

「少ないこと」に豊かさを感じる社会へ

スポーツを始めて、自分にとって本当に必要なものが明らかになった、そんな経験はありませんか?フォームやトレーニング法のみならず、たった一枚のシェル、たった一足のシューズがパフォーマンスを劇的に変えることがあります。と同時に、大いなる無駄が見えてくることも珍しくありません。
奇しくも時代は過剰に消費する経済から、シェアして循環する社会への転換期を迎えつつあります。過剰なまでに簡便性を追求した時代から、無駄を削ぎ落としたミニマルなものに心地よさを感じる時代へ。「所有」に喜びを感じる社会から、「少ないこと」に豊かさを感じる社会へ。こうした時代観、社会観の移り変わりはいま、スポーツを核とする私たちのライフスタイルまでをも変えようとしているのです。

時代を読み解くキーワード「less is more」

20世紀初頭のドイツにこうした価値観をいちはやく提唱した人がいました。モダニズム建築を代表する建築家、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは「less is more」という標語を掲げ、無駄を省いた機能的なデザインを多数、発表しました。「少ないこと」「ミニマルであること」に宿る本質的な豊かさや美しさを浮き彫りにした作品は普遍性をも兼ね備え、世紀を超えた傑作としていまだ多くの人々に愛され続けているのです。

「less is more」を体現するシューズ

モダンデザインの旗手が説いた「less is more」こそ、ニューバランスのランニングシューズ、「ミニマス」のコンセプトでもあります。「ベアフットランニング」で得られる感覚にこだわり、極限までミニマルに設計されたシューズは、靴を履いていることを忘れさせ足本来の機能を取り戻す助けとなってくれるはず。無駄を最適に削ぎ落とすことで得られるのは、より速く、軽く走るという本質的な喜びなのです。  
さあ、無駄を捨て去り身軽になって、次のチャレンジへ