2011.09.12 - 00:00

メッセンジャー YUKI:世界を知るために身体を動かしたかった

(文 佐藤俊 / ポートレート 佐藤 暢隆 /CMWC写真 河合良輔 / 動画 TOTAL TIME 00:24 記事最下段

街中を縦横無尽に走り回り大切な荷物を送り主の気持ちとともに届けてくれるメッセンジャー。そんな「メッセンジャーの祭典」とも言うべき大会をご存知ですか。毎年、世界のどこかの都市で開催されるCMWC(サイクルメッセンジャー・ワールド・チャンピオンシップ)。2011年はワルシャワで開催されました。この大会に参戦するためマドリッドからワルシャワまで3,000キロを自転車で走破した日本人女性がいます。その人の名前はYUKIさん。過去3年CMWCで上位入賞を果たしており、名実共に日本の女性メッセンジャーシーンをリードしている彼女に話を伺いました。

マドリッドからワルシャワまで 3,000キロの旅

CMWCの本番前に大会や英語にも慣れようといろいろ調べていたところ、マドリッドでヨーロッパ大会があることがわかり、本番の1ヶ月前だし、陸続きだから走れるなと思ったのが、この旅のはじまりでした。ちゃんと調べたらロシアから沖縄ぐらいの距離だとわかったのですが、まぁ1日150キロ走ればいいかなって(笑) 日常業務でもそれくらい走っているし大丈夫だって思ったんです。メッセンジャーバッグひとつで旅したのですが、20kgもあって、毎回重量挙げみたいな感じで立ち上がるのにひと苦労でした。ヨーロッパは思っていたよりもバイクフレンドリーではなく、危ない道も多く、現地のメッセンジャーも口々に走りづらいと言っていたのが印象的でした。

ワルシャワまで自転車を漕いで思ったのは、人が住んでいる所なんて、ほんの少ししか無くて、お店も少なく、地球と道しかないような所のほうが多いことでした。スペインからフランスを抜けるまでの500キロとか、お店があったのは3箇所くらい。水は重たくて多くは持って歩けないので、公園で水を探したりもしましたが見つからず、飲めるかわからないような水を飲んだりもしました。おかげですぐにコンビニで水が買えるなんて地球規模で考えたら普通じゃない、お金出せば買えるからって、必要以上に食べたり飲んだりしていたことに気づくことができたんです。

20kgを超えるメッセンジャーバッグを担いで3000kmを移動した

メッセンジャーの通常業務がそのままレースに!?

大会はマニフェスト(オーダー表)が配られ、メッセンジャーとしての普段の業務と同じように集荷と配達を効率よく繰り返し、いかに早く、正確に、より多くの荷物を運ぶことができるかを競うレースです。

速さだけではなく無駄のないコース取りをする冷静さも必要になります。今回は大きな公園の中にチェックポイントが25箇所あり、NO BIKEゾーンもあって、そこに入る時にちゃんとロックしてないと、自転車はどっかにいってしまうんです。ゲリラ豪雨のような土砂降りが何回もあり、水たまりが200メートル続く中を何百人も自力で走っているので、まさにカオス状態でしたね(笑) CMWCに参加すると世界中の知った顔と会えるのが同窓会みたいで楽しいですね。世界大会に出るような人はメッセンジャーという仕事に対しても真剣でタフで良い刺激を貰えます。日本に帰ってきても大会で出会った仲間の顔や言葉を思い出すと、がんばろうと思えるんです。

1日500円のレンタルバイクからスタートした

メッセンジャーになったきっかけは、デザインの仕事をしていた時に、一生に一度は体を使った仕事をしてみたいと思ったのがはじまりでした。友人からメッセンジャーという仕事があることを教えてもらい、いろいろと調べてみました。ちょうど新しくメッセンジャーの会社が立ち上がることを知り、そのタイミングで入れたんです。最初はマウンテンバイクを1日500円で会社からレンタルしていたのですが、気がつけばすっかりメッセンジャーにはまっていました。3ヶ月で辞めようと思っていたのですが、自転車を漕いでいることが楽しくて中毒になっていました(笑)

たった1分、2分の接客でも人の気持ちをつなぐ仕事

メッセンジャーたちはタフで、自然体でコミニティが濃いところが魅力ですね。ずっとこの人達と繋がっていたいと思えるんです。この仕事は荷物を届けるまで、全部人間の力だけで運びきる。人の気持ちと向き合っている仕事だと思っています。でも最近セキュリティが厳しくなってきて、いつも届けていた郵便室のおじさんの顔を見て渡すことができなくなりつつあります。そういうのは寂しいなって思います。

デザイナーとして表現の幅を広げるため身体を動かしたかった

モノを作っていたときに大学院に行こうとしたのですが、このままだと良い物を作れない気がしたんです。もっと違う世界を見ないとダメなんじゃないかって。世界と向き合うために自分が何をしたらいいのか、何が真実なのか探すとなると、机の上だけじゃなくて、身体を動かしたりしないとダメだと思ったんです。偶然メッセンジャーをはじめたけど、この仕事をやっているうちにそれが何かわかってきたような気がしてて、それを今度はモノづくりに活かしたいなって思います。今だったら生きているモノが作れるような気がしています。 そしてメッセンジャーという存在をもっと知ってもらってシーンが発展していくことを考えたいですね。環境にも優しいし、ぜひ使って欲しいです。

(TOTAL TIME 00:24 |動画撮影 上原源太)

 

<プロフィール>
YUKI
Kyoto Loco 2010 Main race 1位、BANG-KING(内灘バンク)1位 etc 日本の女性メッセンジャーとしては最速。2009年CMWCで2位、2010年中南米のGUATEMALAで行われたCMWCでも悪条件の中4位、FIXでは1位と世界でもトップレベル。現在彼女が愛用するのはDURCUS ONE MASTER