(文 大草朋宏/ 動画 TOTAL TIME 04:41 記事最下段 )
火は不思議なもの。見ているとスッと引き込まれて、魅入ってしまう。そんなプリミティブなたき火を囲んで、2011年を振り返る鼎談企画。ゲストにアウトドアブランド〈THE NORTH FACE〉のプレス小口大介さん、音楽レーベル〈JAZZY SPORT〉 のマサヤ・ファンタジスタさん、PRオフィス〈muroffice〉の中室太輔さんと濃いぃルックスの3人。いずれもアウトドア好きで、自然と対面する大切さを唱えています。3.11以降、アウトドア的なスキルや哲学が見直されているなかで、その本当の意味を探る鼎談となりました。男がたき火を囲うと、なぜかじっくり語りたくなるものです。
都会でのたき火と、山でのたき火は違う。
でも火を扱うことは、人間の根源である。
中室 キャンプのときには必ずたき火をしますね。それで何回、洋服に穴を開けたことか。そこで会話が生まれなくても、楽しい時間が過ぎていくので、僕は好きです。
小口 久しぶりだなあ。やはりこういう時間が必要だと思います。ただ、都心の公園でやると、トラックが走っていたり、工事の音が聞こえてきたりして残念だし、本当の自然体ではないですよね。たき火も流れのひとつであって、自然のすべてがリンクしたほうが良いに決まっています。
中室 子どもの頃、公園にライターなんか落ちていると、スタンドバイミーごっことかいって、たき火して遊んでいましたよね。今考えればいけないことかもしれないけど、その遊びは特別な時間でした。
マサヤ 火にはロマンがあって、火をつけてみたいという思いは、本能的な憧れ。こういうグッズ(モノラルの焚き火台 WireFlame/フィールドの環境を守りながら焚き火が楽しめる)があるわけだし、なんでもかんでも規制せず、そうやって学んだほうがいいと思いますね。
山や自然にはいったことのある人が持つ「ある感覚」。
それが3.11以降の世界を救うかもしれない。
中室 都会で利便性の高い社会で生活していると、それは簡単に捨てられないし、自分もそのなかで生活しています。でも自然のなかで楽しみながら違うオプションが増えるなら、それを持っておくことは必要だと思いますね。僕もそういうひとりです。
マサヤ ぼくも環境がおかしいなと思ったときに、自然と山に行くようになりました。周りにもそういう人が増えていて、これはブームではなく、人間の本能なんだなと。山に入ったり、自然とふれ合うことで、まず自分の中にある本能を呼び起こさないといけない。人間が自然に順応していかなくてはならないんです。
小口 そういうアウトドア的な知識や生き方が、特に震災後に見直されている風潮があるけど、実はそうではなくて、発想を柔軟にすることが本質なんだと思います。ただし、自然のなかで学んでいる人のほうが、確かに頭がやわらかくて対処しやすいという意味でのアウトドアスキル、もしくは感覚なんだと思います。
マサヤ 山に行っている人は、無意識のなかでリスクマネージメントの意識が高いはずですよね。山では、常に「何か起きたらどうしよう」と考えているわけです。そこに神経を研ぎ澄ませていることで、本能が高いレベルで発揮される。その状態をなるべく都会でも保てるようになればいいんですよ。山から下りてくると野生化した自分がいますからね。
未来のために。子供たちのために。
ぼくたちがやるべきことと、その責任。
マサヤ 子どもがふたりいるからかもしれないけど、震災をきっかけに、改めて子どもたちに未来をどう残していくか、ということを考えるようになりました。それはオレたちの代だけで出来上がるわけないし、子どもたちの代でも出来上がらないと思うから、その先にどんどんバトンを渡していかないと。
小口 この前、富山で、小学生の集団で山から下りてきて、「こっちは危ないぞ〜」とか「おまえそこ通るな〜」とか、子供たち同士で言い合っているんですよ。それを見て、自分も子どもの頃、そうやって遊んでいたなあと。一方、職場がある原宿で子どもたちを見たとき、あの富山の小学生のような経験をまったくしないで大人になっていくのは危険だぞと思ったんです。彼らは彼らなりに、身をもってリスクヘッジしているんですよ。そういうことを自然のなかで学ばせる機会がないというのはかわいそう。子どもたちを強くしないといけない。
マサヤ ちょうど今僕も、ノースフェイスのクライミングカップを一緒に回って、全国の子どもたちと接しています。クライミングを通して鍛えられるフィジカルとメンタルはかなり質がいいと感じています。自分の手足だけで垂直の壁を上へ上へ登っていくだけというルール。「それが人生だぞ」とかクサイこといいたくなっちゃう(笑)。人間はみんな、もともとそういう感覚=本能のようなものを持っているんですよ。でも大人になるにしたがって、だんだんと薄れていってしまう。だからこれからは、その感覚を鍛えるような環境をつくっていかないといけないと思います。
SPECIAL THANKS:有限会社TSDESIGN モノラル