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日系3世のハワイ人として生まれ、独自のスタイルで華麗に「パイプライン」をライドした第一人者として、世界中のサーファーからリスペクトを集めるジェリー・ロペス。1960年代に若くしてライフスタイルにヨガを取り入れた最初のサーファーでもあり、また、自然をそのままに受け入れたスローライフを実践することでも広く注目される彼は、サーフィンとヨガの結びつきが自分の人生そのものだと語ります。「パタゴニア サーフ千葉」のグランド・オープニングにあわせて来日し、最近はスタンドアップパドル・サーフィンを楽しんでいると笑顔を見せるジェリー・ロペスに話を聞きました。

ライドを成功させるためにボードを自ら制作

初めてサーフィンをしたのは、自分が10歳で弟が8歳のころ。サーフボードを持って母親が2人をワイキキに連れて行ってくれました。そのときすぐに夢中になり、サーファーとして生きていくことが決まったようなものです。自分のスキルを上達させたくてひたすら海に通い、たしか19歳ぐらいで、ボードを自分で作ってみようと思ったのです。まわりにも自分でボードを作っているサーファーが何人もいましたから。

そもそも1000年以上も前にハワイも含めて太平洋の島の人々がサーフィンをしていたころから、サーファーたちはボードを持って海に行き、波に乗る技術を追求してきました。しかしある地点にまで達すると、そこでいったん技術の上達が止まってしまう。それを超えるために、新しいボードが必要になってくるのです。

どういうバランス感覚で、ボードと波の角度を読み取りながらライドするか。自分が波のライドを成功させるボードを作るには、誰かに頼むよりも、自分でシェイプして、磨きをかけていくのが一番の近道なんです。

パイプラインの特殊な波に合うボードも完成させた

1960年代当時、パイプラインはメジャーなサーフスポットではなく、多くのサーファーたちはサンセットビーチに集まっていました。でも、自分が乗ってみたい波が来ていたし、まあサーファーたちがあまり多くないこともあって、私はパイプラインが好きでした。サンセットビーチにはもちろん大きくていい波がコンスタントに来ますが、パイプラインの長いチューブの波はまた独特です。

そのライドに成功できたのは、あの特殊な波に合うボードを自分で作ることができたからです。シェイパーとしての成功のおかげで、実現したと言っていいのかもしれない。他のサーファーたちも私のボードを参考にボードを作って、パイプラインでのライドを目指すようになりました。

今では世界中のサーファーにとって最もポピュラーで、最もチャレンジングなスポットのひとつでもあるパイプラインも、かつては小さなところだったんです。

頭や身体ではなく、スピリチュアルな高揚感が持続する

チューブライディングに成功すると、もちろん大きな満足感と興奮、「波に飲まれずに死ななかった」という安堵感もあります。しかし、そうしたメンタルとフィジカルの感覚を超えて、スピリチュアルな高揚感のものが生まれるんです。自分という存在のコアの部分で感じられる高揚感です。その持続は、頭や身体で感じるそれよりも遥かに長い。自分のスピリットが吸収したエネルギーに満たされているような感覚です。

サーフィンの上達に必要なものが、ヨガにあった

パイプラインでサーフィンをするために、特別なトレーニングをしたことなどはありません。ただあそこの波を楽しんで、通い続けてサーフィンをしていただけです。波に飲まれてしまわないように、ケガをしないように気をつけながら、ただサーフィンを楽しんでいた。

そんななか、20歳のころにヨガを学び始めました。1968年のことです。ヨガと出会ったとき、ここにはサーフィンを上達するために必要な多くのものがあると感じたのです。身体の柔軟性と強さを作り、集中力と反射神経を高め、自分がボードから落ちて波にワイプアウトされたときにも呼吸を整えられる。気持ちを落ち着けてリラックスする方法も学び、健康的な食生活も送ることができる。サーファーとしてのそれまでのライフスタイルに、すんなりとヨガを取り入れることになったのです。
今では若いころと違って、サーフィンのためだけではなく、ヨガとの関わりはより深いものになっています。自分が何者であって、どのように生きていくか。アーサナなどを続けることだけにかかわらず、毎日のあらゆる瞬間がヨガと結びついていると感じます。

サーフィンが人生のメタファーである理由とは

20年ほど前から、私はオレゴンに住んでいます。雪山では、スノーボードを楽しんでいますよ。サーファーたちは、新しい環境でサーフィンの感覚を体験するために、新しいスポーツをいくつも生み出してきました。道路を滑るスケートボード、風を利用したウィンドサーフィンやセイリング、そしてスノーボード。私はすべてを試してきましたが、どうやってライディングをするかの身体言語や、ターンをするときのダイナミックな体感などは、スノーボードが一番サーフィンと近いと感じています。

しかし、それでもやはりサーフィンは唯一のものであって、他とは代え難い。スノーボードを続けるうちに、改めてそんなことを感じさせられました。

例えば、スノーボードやスキーをするとき、山は動かずにじっとしていてくれます。しかし海に行けば、海がじっとしていてくれることはない。だからサーフィンが生命や人生のメタファーとなるのです。波をとらえてスムーズにフローしていくと、人生の本質を教えられます。人生は動き続けていて、そこで自分も動かなければ成長していくことはできない。サーフィンを知ることで、自分がどうやって生きるかを考えることができるのも大きな魅力のひとつです。

ジェリー・ロペス
サーファー、サーフボード・シェイパー。ホノルル生まれ。ショートボード革命の先駆者の一人である”Master of Pipeline(パイプライン・マスター)”として知られる。サーフィン映画『ビッグ・ウェンズデー』(1978)に本人役で出演したほか、ドキュメンタリー映画『ライフスタイル・オブ・ジェリー・ロペス』や著書『SURF IS WHERE YOU FIND IT』などでも、世代を超えて広く影響を与えている。

パタゴニア サーフ千葉
日本有数のサーフポイントとして知られる千葉県・一宮エリアで、海まで徒歩圏内に位置するサーフ千葉ストアは、「日本の歴史的な建造物をイメージできるような高床式で大屋根に覆われた回廊をもつ素朴な建物」というコンセプトのもと建築された。

敷地内のオープンスペースは、店舗と地域との環境的/社会的な調和を考慮し、地域の憩いの場やパタゴニアのイベントスペースとして使用される予定。

またサーフボードのシェイプができるように敷地内にはシェイピングルームを備え、環境配慮型のサーフボード製作の機会を特定のシェイパーに限らず未来を担う若手のシェイパーにも紹介できるよう開放されている。周辺の環境と調和して地域に貢献できる施設として、長く育まれてきた一宮エリアの地域社会との共生を目指している。

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