2011.09.21 - 00:00

宇野薫:変化に順応するために自分を知る

(文 浅野じたろう(ATAQUE) / 写真 DYSK 動画 TOTAL TIME 00:341 記事最下段

総合格闘技、Mixed Martial Artsの黎明期にそのキャリアをスタートさせ、ジャンルのパイオニアとして闘ってきた宇野薫さん。プロ生活15年を迎え、さらに挑戦を続ける、激しい闘いを支えるカラダとココロについておうかがいしました。

一度もケンカをしたことがない

子どものころから、一度もケンカをしたことがないんです。地元でツッパった人たちがいると、視線をそらして逃げるように通り過ぎてましたね。プロレスファンだった兄の影響で、一緒にプロレスをよく見ていました。プロレスラーになりたいという想いから、高校ではレスリング部に入ったんですが、当時プロレスラーは180cm、100kgが当たり前だった時代に、身体が大きくならなくて。それで、友だちに誘われて和術慧舟會の練習に参加したのが総合格闘技の始まりでした。
ずっとレスリングシューズを履いてやってきていたので裸足での練習にはなかなか慣れず、ようやく慣れたころにはすっかり楽しくなっていたのと、体重で階級が分かれている競技ということが自分に合っていたんだと思います。
そして、そこに修斗があり、佐藤ルミナ選手という憧れの存在がいたことで、どんどんのめり込んでいきました。

闘うための身体作りとは?

大きく分けると、日常のトレーニングと試合が決まってから直前までのトレーニング。

普段はウェイトトレニーングを中心としたフィジカル強化に加えて、ランニング、ボクシング、グラップリングが基本です。試合が決まっていないときには、そういうときだからこそ取り組める新しいテクニックを身につける練習や、もともと身についてる技術でも気になっている部分を改善したり、あとは前の試合の反省点を踏まえつつ、次に向けてのトレーニングプログラムを考えたりしています。対戦相手が決まれば作戦を組み立てて、スパーリングなどはより試合を想定した内容になりますね。さらに試合が近くなると、追い込まなくてはいけないという気持ちも生まれてくるのですが、まずは試合当日までにコンディションを整えなくてはならないので、心身ともに休ませることも大事な練習だと考えています。

減量という特別なトレーニング

試合の直前に大幅に減量する選手も多いんですが、体重はあまりベースを増やしすぎないように心掛けていて、1ヵ月半から2ヵ月で通常73kgくらいから計量時の65kgまで落としていきます。トレーニングはもちろん、食事の摂り方、特に炭水化物、タンパク質の摂取量のコントロールも大事です。試合が終わったら、これを食べよう、あれを食べようって思うんですけど、いざ終わると、どうでもよくなって意外と食べないことが多い。食べすぎると、体が重くて動きが鈍くなるし、そのあとの練習のことを考えると……。少しのコンディションの違いがスピードやスタミナに大きく影響するんで、どうしても敏感になります。

転換期になった階級の変更

昨年、これまで闘ってきたライト級の70kgからフェザー級の65kgに階級を下げました。トレーナーとよくコミュニケーションをとって、スピード、スタミナ、パワー、いろんな側面から、時間をかけて計画的に肉体改造に取り組みました。新しい階級で2試合を闘って実感するのは、今の時代のMMAにはこの体重がフィットしているんだなということです。長く所属していた道場からフリーになって環境も大きく変わりました。フィジカルトレーニングのトレーナー、ボクシング、柔術、MMAのコーチ、練習仲間、そしてマネージャー。実際に闘うのは自分ですが、チームで取り組んでいかないと勝てない競技なので。新しいチームで、現在進行形のMMAに必死で追いついていっています。

年齢を重ねるということ

今のトレーナーと身体作りに取り組み始めて3年が経ち、ようやく形になってきました。ずっと続けてきて、いい意味での変化、進化を実感できています。歳をとったから筋肉量が落ちるとか、グッドシェイプを保てないとか、そんな考えを変えることができた。これまでの積み重ねがあって、さらにこれからの毎日の積み重ねが成果につながっていくんだなって。MMAは新しい競技で常に進化していくし、総合と呼ばれるくらいですから、オフェンスもディフェンスもいろいろな要素が必要になる。変化に順応していくためには自分を良く知らないといけないんです。僕のまわりには激しい変化に順応しようと目標を持ってる若い選手も多いし、そういう姿勢は勉強になる。

僕も分からないことがあれば彼らに聞きますし、年上とか年下とか関係なく悪いところやアドバイスは言ってもらえるなら聞きたい。昔のことを大事にしつつ、まだまだ新しいことを取り入れていきたいんです。ベーシックがあって枝葉がある。これはトレーニングだけじゃなくて、勝ち方にしてもそうです。ひとつしかないわけじゃないし、これをすれば絶対勝てるというものでもない。家庭もあって、会社の仕事もあります。いろいろ自分のわがままを聞いてもらいながら、限られた時間のなかで練習をするわけですから、フィジカル的にも技術的にも、ベーシックな部分も枝葉の部分も、どれだけ変わる自分を意識しながら練習できるか、をいつも考えるようにしています。

始めた頃と何も変わらないこと

選手生活も長くなりました。いつも試合のたびに、MMAで勝つことって難しいなって思うんです。ずっと勝てない時期が続いていて、5月にやっと勝てたことで、あらためてそう感じています。まだやれる、まだやりたいという気持ちがさらに強くなりました。あきらめなくてよかった。やめちゃおうかとか、何のためにやってるんだろうとか、何度も、何度も格闘技を裏切りそうになりました。でも、どんなときも、強くなりたくて、上手くなりたくて練習する、そんな生活が好きな自分がいるからこそ、これまで続けてこれました。もっと上手くなりたい、その気持ちは始めたころと何も変わっていません。

(TOTAL TIME 00:41 |動画撮影 上山亮二)

 

宇野薫
総合格闘家。プロレスへの憧れから、高校時代はレスリング部に所属。修斗でプロデビュー。第4代修斗ウェルーター級王者についたあと、総合格闘技のメジャー、UFCに参戦。惜しくもベルトには届かなかったが、トップ戦線で活躍。現在は、DREAMに参戦中。